研究概要 |
1.蛋白尿惹起単クロ-ン抗体(MA)5-1-6の大量精製:MA5-1-6産生ハイブリド-マの腹水化を常法どうり試みたが成功せず、高密度細胞培養装置とFPLCを応用して、in vitroでの大量精製を行い同一ロットによる検索を可能とした。2.静注MA及び対応抗原の kinetics,並びに腎結合MA量と蛋白尿に関する定量的検索:注入MAは30分後には既に slit diaphragm 並びに上皮細胞足突起表面に弱く証明され、対応抗原は同部位に強く認められた。以後、抗原は減少し、24時間後には上皮細胞内小胞体に証明されるようになり、消失した抗原の再合成像と解された。3日後にはMAはもはや細胞表面には殆ど証明されず、部分的に上皮細胞中のmulti-vesicular body中に認められた。^<125>I標識MA5-1-6による定量的検索から2mgのMA投与1時間後の腎結合量は50.8±10.4μgで以後急速に減少し、15日後には1.9±0.4となりほぼ消失することが判明した。尚、この時生ずる蛋白尿は5日後に140mg/日に達し、15日後には正常化した。又このMAは極く微量(投与量として125μg,腎結合量として1時間後には12.8μg)にてラットに病的蛋白尿を惹起し得た。3.腎糸球体可溶化による対応抗原の同定と性状検索:常法による抗原の同定精製の試みは難航している。(1)可溶化方法の再検討、(2)出発材料の大量化、(3)MAによるcDNAクロ-ニングの予備的検討を計画中である。4.他のネフロ-ゼモデルにおける認識抗原の量的質的変化に関する検索:アミノヌクレオシド腎症始めとする他のモデルに於いても、蛋白尿の動態とよく相関した抗原の増減と局在変化が認められた。以上より、MAと限定された抗原分子間との反応が発端となって蛋白尿が惹起されうること、並びにこの抗原分子が正常の糸球体基底膜透過性保持に重要な役割を演じていることが、より明確となった。
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