初年度につずいて生後三日胸腺摘出BALB/cマウスに高率に発症する自己免疫性胃炎をモデルとして発症の遺伝支配と自己抗原の関係について解析した。発症遺伝子の一つは少なくとも第一染色体上のMlsー1遺伝子に連鎖しているが、この関係は胃炎発症BALB/cマウスにMlsー1^a反応性Vβ6陽性T細胞が増加し、且つそれらのマウスから13株/20株の高率でMlsー1^a反応性-Vβ6陽性T細胞クロ-ンが確立された事からも示唆された。これらのクロ-ンはすべてMlsー1^a抗原と共通抗原性があるといわれるStaphylococcal enterotoxinsに反応して増殖し、且つその中の2株はin vitroに於てマウス胃壁細胞に反応して増殖し、nu/nuマウスへの移入によって、1週後胃壁細胞抽出液に対するDTH(足しょう)反応を誘導し、4週後には弱いながら胃局所における単核球を伴う胃壁細胞傷害と抗胃壁細胞抗体産生を惹起する個体も一部に認められた。これらの所見は胃壁細胞自己抗原とMlsー1^a抗原の直接あるいは間接敵関連性の存在を窺わせるが、我々の作製したモノクロ-ナル抗胃壁細胞自己抗体3種の内、2種は種をこえて胃壁細胞のproton pump(H^+/K^+ーATPase)のα及びβ鎖をそれぞれ認識している事が精製蛋白を使う事によって確認された。更に、この抗体によって精製された豚胃壁細胞β鎖を基にして、β鎖の遺伝子構造と一次構造が決定された。胃壁細胞自己抗原とStaphylococcal enterotoxins間の共通エピト-プを確定しMlsー1抗原の実体と生物学的意味を明らかにする事が次の目標である。
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