1.BUF/Mnaーrnu/+系ラットにおける胸腺腫発生の抑制に関する検索:(1)BUF/Mna系ラットへのrnu遺伝子の導入のため退交配を繰り返し、20代まで進め、congenic nude ratとして確立した。(2)退交配19代のラットを用いてrnu遺伝子のsingle dosageによる6週齢時の胸腺サイズの減少を再確認した。また退交配17代のラットを生後18カ月で屠殺し、胸腺腫発生を検索したところ、完全な胸腺腫発生抑制効果を再確認した。 2.Tsrー1に関する分子生物学的検索:(1)BUF/MnaおよびACI/NMs系ラットより樹立した良性胸腺腫細胞株3例、悪性胸腺腫細胞株2例、正常胸腺腫細胞株2例について、EGFR、cーerbBー2、ret、kitの発現をノ-ザンブロット法にて検索した。これらの細胞よりpoly(A)+RNAを精製し、それぞれの遺伝子cDNAとハイブリダイズした結果、全ての細胞株でEGFRのみの発現を検出した。mRNAのサイズは約10kbと5.8kbで、正常肝のRNAで検出されるEGFR mRNAのサイズと一致していた。発現レベルは良性胸腺腫および正常胸腺由来の細胞株ではほぼ同じレベルであったが、悪性胸腺腫細胞株では数分の1に低下していた。(2)BUF/Mna系ラット胸腺腫から、サテライト I DNAの92/93 bpのモノマ-と185 bpのダイマ-をpUC19プラスミドに挿入してクロ-ニングを行った。サテライト I DNAのモノマ-17クロ-ン、ダイマ-はAB、BC、CDのいずれかの組合せであった。モノマ-の一つのクロ-ンのみは、いずれのsubfamilyにも分類されないため塩基配列を詳しく検討した。その結果、このクロ-ンは姉妹染色分体の不等交差に伴うDNAの欠失とsubfamily間のgene conversionによって生じたと考えられた。
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