研究概要 |
生体に侵入した細菌の表層で補体が活性化されて菌体表面にC36やiC36が結合すると、白血球やマクロファ-ジの補体レセプタ-に結合捕捉されて食菌作用が開始され,更にC5から形成されるC5aは強力な走化性因子で白血球やマクロファ-ジを菌の侵入局所へ誘引し、C5aレセプタ-を介してこれら貧食細胞を刺戟して補体レセプタ-を更に細胞表面に形成増大させる。又,グラム陰性菌の場合には、以上の機構に加えて,菌体外膜上に膜侵襲複合体,C56ー9,を形成して膜を障害して直接殺菌する。 レンサ球菌M蛋白は古くから抗貧食作用によりこの菌の病原性を発揮することが知られているが、我々はA群溶血性レンサ球菌3型の病原株(M^+菌)とそれに由来するM^-菌を用いてこの菌の表層での補体活性化反応を解析しM蛋白は代替経路での(3転換酵素形成を著しく阻害すること、又,古典経路ではC3転換酵素形成をそれ程阻害しないが、C5転換酵素活性を著しく阻害することを見出した。従ってM蛋白はC36形成の増幅回路を遮断し実にC5a形成を阻害することにより貧食細胞の誘引とこれらの表面の補体レセプタ-形成の正調節を阻害して貧食作用を免れることを明らかにした。又,大腸菌のR100プラスミドのtra T遺伝子雇物は菌の接合時に表面排除に働くことが知られているが、菌に補体に対する抵抗性を与えることも知られている。この遺伝子の既知のDNA構造から,合成ペプチドTra T〔86ー99〕を合成し,これに対する単クロン抗体を作成した。それを用いてTra T蛋白を追跡して菌体膜画分からTra T蛋白を部分精製し、更にこれを抗原として.Tra T蛋白に対する単クロン抗体をも作成した。精製Tra Tを補体による溶血系に加えて補体活性化反応での抑制段階を追求し、Tra Tは主としてC6反応段階、又は、C5b6複合体形成段階を抑制することにより抗補体性を発揮することを明らかにした。
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