ヒトサイトメガロウイルスに外来遺伝子を導入して組換えウイルスを作製するために、外来遺伝子導入部位の検討、遺伝子導入方法の検討、遺伝子発現のためのプロモ-タ-検討等を行いその結果、 1.外来遺伝子導入の部位としてはHinddIII 0断片領域が適していて、この部位に外来遺伝子を導入してもウイルスの感染・増殖にはあまり影響を与えない。 2.導入方法としてはウイルスのゲノムサイズが増大するインサ-ションベクタ-よりゲノムサイズがあまり変化しないリプレイスメントベクタ-の方が効率が圧倒的によく、燐酸カルシュウム法のトランスフェクションにより子孫ウイルスの約10%が組換えウイルスであった。 3.遺伝子発現のためのプロモ-タ-としては、ウイルス自身の後期のプロモ-タ-(PgB)が有効であったが、SV40ウイルスの初期プロモ-タ-(PSV)はさらに効率がよかった。後者において遺伝子発現は感染6時間目より検出され、以後はほぼ一定量の発現が感染後期まで続いた。 4.レポ-タ-遺伝子としてのlacZは有効で、組換えウイルスではXーgal添加後24時間以内に発現したβーガラクトシダ-ゼの働きによりブル-の発色が見られる。 5.挿入された遺伝子は安定に存在し、子孫ウイルスでの挿入遺伝子の脱落は見られなかった(0.1%未満)。 以上の結果から培養細胞における発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルスの可能性はきわめて有望なことが示唆された。
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