ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を外来遺伝子発現のための培養細胞でのベクタ-として使用できるかどうかの検討を行い、以下のような結果を得た。 1.外来遺伝子導入部位・方法としてはHindIII 0 断片領域を引き抜いてかわりに外来遺伝子を導入する置き換え型の組換えが有効であった。この組換え体は非常に安定でリバ-タントの発生を見られず、感染増殖も良好であった。組換え体の産生率は出現ウイルスの10%と高率であった。 2.外来遺伝子発現のためのプロモ-タ-としてはウイルス自身のプロモ-タ-だけでなく、ウイルス以外のプロモ-タ-でも効率よい発現が得られた。大型DNAウイルスにおいて自身以外のプロモ-タ-が有効であったのはこれが最初の例と思われる。特にSV40ウイルスのプロモ-タ-は良好な発現が得られたが、それでも感染後期では何らかの発現抑制が見られ現在解明中である。これが明らかにされるとさらに効率のよい発現ベクタ-ができる可能性がある。 3.外来遺伝子として1acZ遺伝子を用いたが組換え体のアカラ-アッセイが容易にかつ確実に行えた。今後はこれを親株として組換えを行い、親好は青いプラ-クを組換え体は無色のプラ-クを生じるので組換え体の選択が簡単に行える。 以上の結果から培養細胞における発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルスの有効性は大きいことが示唆された。
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