研究概要 |
本年度は自己MLR(mixed lymphocyte reaction)の反応論とその生物学的意義に関して、次のようなことを明らかにした。(1)自己MLRはアクセサリ-(AC)細胞上のMHCークラスII(DR)抗原によるヘルパ-T(TH)細胞の活性化反応であるが、この細胞間相互作用は、いずれかの細胞をシアリダ-ゼで処理することにより、著しく増強することを明らかにした。(2)その結果、自己MLRは、THの活性化反応であるにも拘わらず、ILー2のmRNAの発現は起きず、ILー3,ILー5,ILー6,ILー7などのILー2以外の増殖性サイトカインの産生に基づくTH増殖反応であることがわかった。(3)そして、自己MLRには、DRーTH間の反応以外に、AC上の未知の抗原刺激によるαβT細胞レセプタ-(TcR)あるいはγδTcR陽性のCD4^-CD8^-double negative T細胞の活性化も誘導されることを明らかにした。つまり、自己MLRは単一の細胞間の相互作用によって起こる反応ではなく、より広範な細胞の活性化反応であることが明らかとなった。(3)以上の自己MLRの反応論の解析結果に基づいて、自己免疫モデルMLR/lprマウスにおけるT細胞リンパ球異常の反応論を追跡した結果、このリンパ球異常はCD3^+CD4^-CD8^-B220^+ αβTcR^+T細胞が自己アクセサリ-細胞に反応して誘導される異常増殖反応であること、この反応は、骨髄や脾で起こるのではなく、主として肝類洞で起こることを明らかにした。(4)この反応も、ILー2非依存性に、ILー6などの関与の下に進行している異常な自己MLRの1つの型であるものと推論された。 以上、実験的自己MLRの反応論の解析を進めるとともにその病的反応としての自己免疫モデルマウスでのT細胞分化異常の存在を明らかにした。
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