研究概要 |
安定なCD4^+ Ts細胞を得る方法はすでに確立されているが、安定なCD8^+ Ts細胞クロ-ンを得たとの報告はきわめて少ない。最近われわれは、安定なCD8^+ Ts細胞クロ-ンを得る方法を見い出した。この方法によって樹立した数株のCD8^+ Ts細胞クロ-ン株を用いて、ヘルパ-T(Th)細胞クロ-ンに対するTs細胞クロ-ンの抑制機序を解析した。 (1)CD8^+ Ts細胞の全てにγIFNの産生が認められたが.一部のクロ-ンを除いてIL2,IL4の産生は認められなかった。細胞傷害活性も検出されなかった。いずれのCD8^+ Ts細胞も、B細胞による抗体産生・Th細胞の抗原刺激による増殖性反応およびIL2産生を、抗原非特異的に抑制したが、マイトゲンやIL2によるT細胞増殖性反応は抑制しなかった。 (2)固相化した抗CD3抗体によってCD8^+ Ts細胞を活性化すると、可溶性抑制因子を産生することが明らかになった。T細胞増殖性反応に対する抑制活性は、分子量40K、前後の分画中に検出された。 (3)T細胞をこの抑制因子で前処理してもその反応性は抑制されないが、抗原提示細胞(APC)を前処理すると強い抑制が認められた。さらに、抑制因子で前処理したAPCは、別の細胞群の反応を抑制することが示唆された。 (4)増殖性反応やIL2産生に対する抑制活性は抗IL10抗体によって完全に吸収された。 (5)ところが、抗体産生に対する抑制作用は抗IL10抗体では吸収されず、またリコンビナントIL10やγIFNが抗体産生を抑制しないことから、CD8^+ Ts細胞は、T細胞増殖生反応を抑制するIL10と、これとは異なる抑制因子(TsF)とを産生していることが示唆された。
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