研究概要 |
ヒトT細胞の抗原受容体に対する抗体(抗T3)でT細胞を刺激し増殖を誘導するには,マクロファ-ジ(Mφ)等のアクセサリ-細胞(AC)から分泌される液性因子とTーMφ間の細胞表面相互作用の両者が必要である。昨年度は,液性因子について,ILー1とILー6が必要なこと,および増殖は主としてILー2によることを示した。又,表面相互作用に必要な表面分子の少なくとも1つはインタ-フェロンγ(IFNーγ)で24時間以内に誘導されることを明らかにした。今年度においては1)この表面分子は分化したMφ細胞株には誘導できるが未分化の細胞株HLー60には誘導できないことを確かめた。2)TーMφ細胞間相互作用に必要な細胞表面分子を探研するためにIFNーγ処理μ937細胞株でマウスを免疫し,KWー23およびKW4の2種の単クロ-ン抗体を得た。KW23は200Kdの汎白血球抗体であるが,分子量や細胞分布の類似するCD45とは免疫学的に交叉反応がなく,恐らく未同定の分子に対する抗体であり,抗T3によるT細胞増殖誘導を抑制した。KW4はLFAー1に対する抗体でT細胞増殖を高度に抑制した。抗ICAMー1γ抑制することから,TーMφ間相互作用にはLFAー1/ICAMー1分子を介するものの他に新しく見出されたKW23分子を介する相互作用も必要であると推測される。3)フイトヘムアグルチニンによる増殖にはLFAー1やKW23を介する相互作用は不可欠ではなく,これはレクチンの結合する表面分子で代用されることが考えられる。4)以上より,われわれはMφとT細胞の相互作用は両方向性で,Mφによる抗原提示中にT細胞からIFNーγが遊離し,Mφに作用して新しい表面分子が誘導され,この分子やICAMー1によりT細胞の増殖誘導に有効な相互作用が行われることを提唱した。
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