研究概要 |
先ず,鉛によるポルフィリン代謝異常の発現と微量元素の体内動態との関係を解析するために,マウスに種々の濃度(200ー500ppm)の酢酸鉛を含む飲水を一定期間投与したのち,尿中δーアミノレブリン酸(ALA)排泄量並びに肝臓中の亜鉛,銅,マグネシウム等を測定して,尿中ALA排泄量と肝臓中の微量元素濃度との関係を調べたが,一定の傾向は見られなかった。 次に,昨年度明らかにした2系統(ddYとC57BL/6)のマウス間に見られた尿中ALA排泄動態の著明な差異に関して,この様な系統差(尿中ALA排泄量はddYマウスよりもC57BL/6マウスの方がおよそ3倍高値を示す)が,生体側のいかなる要因によりもたらされたかを解析した。生体内ALAの代謝に直接関与している酵素としては,ALA合成酵素(ALAS)とALA脱水酵素(ALAD)の2つが考えられるため,これらの酵素活性が2系統のマウスにおいてどの様な関係にあるかを調べた。一方,ミトコンドリア酵素であるALAS活性の測定法には必ずしも簡便な方法がないため,我々は本酵素活性の簡易測定法の開発にも挑戦し,新しいル-チン分析法を確立した。2系統のマウスより得られた肝のALAS活性を比較したところ,ddYマウスとC57BL/6マウスとの間に有意差は認められなかった。一方,肝のALAD活性はC57BL/6マウスの方が有意に低いことが認められた。これらの結果を踏まえながら,両酵素の活性比が,ALA産生量の多い骨髄においても肝におけると同様の傾向を示すと仮定すれば,昨年度明らかにした2系統のマウスにおける尿中ALA排泄量の著明な系統差は,主にALADの働きによる可能性が示唆された。
|