研究概要 |
1.本年度は環境因子の複合影響を評価する系として、ラット灌流肝臓系を確立した。動物はWister系雄性ラットを使用した。血液成分を含まない灌流液(Krebs-Henseleit bicarbonate buffer)を用い、non-recirculating systemで定流灌流(灌流量30-35ml/min,灌流温度31℃)を行った。定常状態において、灌流圧は4.4±1.1mmHg、酸素消費量(Q02)は1.92±0.34μmol/g liver/minであった。また、10nM±エピネフリンを負荷すると、還元型ピリジンヌクレオチド(PN)量、cyt c、cyt aa3に変化が認められた。以上より作成した灌流肝臓は生理的状態を長時間保持し、今後の実験に供するに充分な系であると結論した。2.i)摂食、絶食ラット灌流肝臓にethanolおよびethanol+100μM flufenamic acid(非ステロイド系抗炎症剤)を負荷し、栄養状態が異なる環境下の複合影響を観察した。ethanol負荷により、摂食時、絶食時共に、PN量は増加した。(46.4±5.9、51.2±6.9%)。ethanol取り込み量はそれぞれ1.6±0.4、1.3±0.2μmol/g liver/minを示し、両群間に有意差が認められた。同時に100μM flufenamic acid を負荷すると、絶食時のPN量は著しく減少(-202%)し、摂食時のPN減少率(-50.5%)の4倍を示した。また、ethanol取り込み量は共に減少したが、その減少率を比較すると絶食時の方が少ないことが明らかになった。ii)10nMエピネフリンとトリクロロエチレン(TCEL)を同時に負荷し、その複合影響について検討した。TCEL負荷により減少したPN量(-48%)は、エピネフリンを同時に負荷するとさらに減少した(-82%)。また、TCEL代謝率は、エピネフリン負荷により約27%増加した。以上より、実際の血中濃度として存在しうる10nMエピネフリンによりTCEL代謝のこう進が示唆された。この機序に関しては現在検討中である。3.さらに、灌流腎臓系を作成し、各種基質の負荷を行った。結果の詳細は第60回日本衛生学会総会で報告する。
|