研究概要 |
1、本年度はラット潅流腎臓系を確立した。動物はSD系雌性ラットを用いた。KrebsーHenseleit bicarbonate bufferにdextranを添加した潅流液を用い、nonーrecirculating systemによって潅流を行った(潅流温度31℃)。i)腎潅流に適切な基質の組成について検討した。Lーlactate、αーketoglutarateによって還元型ピリジンヌクレオチド(PN)量、cyt c、aa3の還元型が増加した(Lーlactate:PN量29.8%,cyt c11.0%,αーketoglutarate:PN32.4%,cyt c12.5%,cyt aa36.7%)。このことは両物質によりミトコンドリア電子伝達系で電子輸送速度が促進していることを示唆している。従って潅流液の組成にLーlactateとαーketoglutarateを基質として組み込むことは、腎臓を生理的状態に保持するために効果的であると考えられた。ii)基質として5mM Glc.,5mM Asp Na,5mM αーketoglutarate,4mM Lーlactate,を加えた潅流液を用いて潅流腎臓細胞内エネルギ-状態および腎機能を観察した。潅流圧80ー100mmHg,潅流量10ー12ml/g kidney/min,QO26.8±0.3μmol/min,PN量52.2±1.6%,cyt c22.1±1.5%,cyt aa3 15.5±2.2%,creatinine crealance0.34±0.05ml/g kidney/min,Na再吸収率(FRNa)94ー98%であった。以上より作成した潅流腎臓は生理的状態を長時間保持し、今後の実験に供するに充分な系であると結論した。2、摂食ラット潅流腎臓にflufenamic acidを負荷し、腎細胞エネルギ-代謝に及ぼす影響を観察した。100μM flufenamic acid負荷によるPN量は70%減少した。またFRNa,Caは67.5%,70.7%まで有意に減少した。以上よりアンカップリング作用の結果エネルギ-依存性イオン輸送系機能低下が起こり、細胞内イオン濃度が上昇した。その結果再吸収率の低下がもたらされたと推定された。3、摂食、絶食ラット潅流肝臓に28.8μM styreneおよびethanolを負荷し、栄養状態が異なる環境下の複合影響を観察した。摂食ラットにethanolを負荷すると肝臓のstyrene取り込み率は16%減少した。また、ethanolによってstyrene glycol生成率は摂食、絶食ラット共に増加し、経時的動態に違いは認められなかったが、styrene oxide生成率は絶食ラットの場合大きく減少した。
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