研究概要 |
老化の初期変化を酸化的ストレスの集積としてとらえ、生体膜構成脂質の酸化機序と活性酸素種(O_2^ー)の消去機序の解明を目的とした。研究方法に用いた手法はGC/MS/COMによる分析と分光光度計による比色定量分析である。以下本研究により得られた知見等の成果を列挙する。 1.0_2^ーによるLDL中脂質の酸化で、オクタデカノイド、エイコサノイドやドコサノイドの不飽和脂肪酸類がパ-オキシ体やエポキシ体に、飽和脂肪酸類からは水酸化体に変化する。コレステロ-ルでは脱水素体、エポキシ体、水酸化体やメトオキシ体に変化することが判明した。 2.H_2O_2を用いてLDL構成脂質の純品の酸化で1.と同様の結果を確認したが、更にその異性体の生成が認められた。コレステロ-ルー5,6ーエポキサイドにα,αとβ,βが存在し、動脈硬化巣にはα,α体が蓄積していた。 3.これらの酸化脂質の知見をもとに、老化性疾患での組織蓄積酸化脂質を検索した。(1)本態性高血圧症患者赤血球膜からコレスタ-3,5,7ートリエン、コンスタ-3,5ージェンー7ーエポキサイドの新生を発見した。(2)動脈硬化巣からデヒドロコレステロ-ル、そのエポキサイドとコレステロ-ルー5α,6αーエポキサイドの蓄積が判明した。(3)肺腺癌からC_<16:0,18:0,20:0,22:0,23:0,24:0>のαー水酸化体とコレステロ-ル酸化体が検出された。 4.色素性繊毛結節性滑膜炎患者の膝関節液中からコレステロ-ルエポキサイドが検出された。そこで、健常単球との浮置を行うと、単球の泡沫化を惹起した。更に同体を兎膝関節に埋め込み病変の生起することも確認した。 5.ス-パオキサイドジスムタ-ゼ活性は糖尿病患者幼若赤血球で健常者と同レベルであるが、老齢赤血球では顕著に低下することが判明した。
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