緊縛性ショックの血圧降下は、緊縛部位より末梢の虚血が原因となってリソゾ-ム酵素が細胞外へ漏出し、ショック増悪因子として全身的に作用していると考えられる。そこで、緊縛解除一定時間後に再緊縛を施し、リソゾ-ム酵素活性の変動を検討した。また、熱傷ショック時のリソゾ-ム酵素活性の変動も併せて検討した。 [材料及び方法]実験動物は家兎を用い、実験方法はこれまでの方法に準じた。 [結果]1.緊縛解除後及び再緊縛後の血圧はこれまでの成績と差異はなかった。βーグルクロニダ-ゼ(BGL)やNーアセチルーグルコサミニダ-ゼ(NAG)は緊縛解除後上昇傾向を示し、再緊縛後には下降した。ACPは再緊縛21時間後には緊縛前の値に近づいた。LDHは解除前に著しく上昇したが、再緊縛21時間後には緊縛前の活性に近づくものが多い。2.両大腿部を75℃・1分間の熱湯浸漬により、再現性のよい熱傷ショックモデルが得られた。このモデルでは、熱傷1時間後頃から血圧は緩除に降下し、熱傷4〜6時間後に死亡した。BGL活性は熱傷1時間後に急上昇し、その後も高活性が持続した。NAG活性は上昇し、死亡時まで活性は上昇した。ACPは熱傷前から死亡時にかけて活性変化は殆ど見られなかった。LDHは、熱傷1時間後に急上昇するもの、死亡まで徐々に上昇する例があり、死亡時にはいずれも著明に上昇した。 [考察]緊縛解除3時間後の再緊縛で、リソゾ-ム酵素活性は低下し、これらのウサギは死亡しなかった。熱傷ショックでは、ACP以外のBGL・NAG・LDH活性は上昇して家兎は死亡した。酵素活性の変動は、緊縛性ショックに酷似していた。従って、緊縛性・熱傷ショックのいずれにせよ、組織・細胞障害により、リソゾ-ム酵素が細胞外へ漏出して異常な代謝経路を亢進していると考えられる。
|