研究概要 |
本年度は,抗CD3抗体刺激を用いる実験系によって,健常人末梢血中に存在する自己抗体産生前駆細胞(特にリウマチ因子・抗DNA抗体)の活性化の機序につき詳細に検討を行った。その結果,黄色ブドウ球菌の単独刺激のみではリウマチ因子産生はみられたが,有意な抗DNA抗体産生はみられず,これにT細胞を加えると特に抗DNA抗体の産生が上昇することが判明した。さらに,抗CD3抗体刺激下では,リウマチ因子・抗DNA抗体の両者の産生がみとめられたが,これに黄色ブドウ球菌を加えると,リウマチ因子の産生のみが著明に増加した。以上観察された黄色ブドウ球菌の作用は,プロティンAによって置き換えることができた。以上より,リウマチ因子産生と抗DNA抗体産生細胞は各々活性化の機序が全く異なっていることが明らかになった。すなわちリウマチ因子産生細胞の活性化に際しては,黄色ブドウ球菌プロティンAが重要な役割を果していると考えられ,一方抗DNA抗体産生細胞の活性化にとってはT細胞の存在が必須であることが示された。これは,慢性関節リウマチと全身性エリテマト-デスの免疫異常の差異を理解する上で重要な知見である。以上に加えて,本年度は慢性関節リウマチ患者末梢血単球の表面抗原の解析を行った。その結果,慢性関節リウマチ患者単球表面のタイプI・Fcレセプタ-(CD64抗原)の発現が増強していることが明らかとなった。黄色ブドウ球菌プロティンAもこのタイプI・Fcレセプタ-もIgGと結合するという点で共通性を持つことから,こうした単球の表面抗原の異常が慢性関節リウマチ患者血清中のリウマチ因子の存在と関連する可能性が示唆された。
|