研究概要 |
1)ATLで高頻度にみられる高Ca血症に,ATL細胞が骨吸収活性を有するIL1を分泌すること,ATL細胞の増殖がIL1によって促進されること,ATL細胞は高Ca条件下でむしろ増殖が促進されることなどよりIL1を介するある種の悪循環機構の存在を考えていたが,今年度,高Ca条件下でIL1の産生自体,IL1レセプタ-の発現も増強することより,上記の悪循環説を実証したと考えている。 2)ATLはPTHγPをも産生することが知られており重要なHHMの惹起因子であるが、血中PTHγP測定はこれまで不可能であった。今年度,PTHγPのC末端測定のRIAを開発し,本法を用いて各種悪性腫瘍(特にATLの多数例)患者の血中PTHγPを測定したところ,HHM群では高値であるのに対し,非HHM群では正常範囲にあり,また原発性副甲状線機能亢進症では高Ca血症の存在にも拘らず全例,正常であった。よって,本法は高Ca血症の鑑別,特にHHMの診断に極めて有用であると考えられる。 3)本来,活性化Tリンパ球より分泌されBリンパ球の増殖作用を有することで知られたIL4の骨代謝に関する知見は皆無であった。我々はこのIL4がin vitroの系で各骨吸收刺激因子(PTH,PTHγP,IL1,PGE_1等)による骨吸収に対し抑制作用のあることをはじめて見出し,同時にATL細胞培養上清中のIL4の存在を認めており,したがって,このIL4はATLの高Ca血症を修飾している可能性があると考えられる。さらに,マウスにPTHγPを投与して惹起させた高Ca血症がIL4の同時投与により是正されたとの予備的成績も得ており,将来的にはヒトのHHMに対する治療に応用出来ると考えている。
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