研究概要 |
本年度はラット摘出肝灌流法を用いて、UDCA,TUDCA,βMCA,TβMCAを中心に、一部αMCA及びTαMCAを含めて、その利胆作用と胆汁欝滞改善作用を検討した。その結果、(1)正常肝においてはUDCAが重炭酸イオン分泌を伴う最も強い利胆作用を示し、βMCAも明らかな重炭酸分泌増加を示すがUDCAより低い利胆であった。TUDCAとTβMCAはほぼ同程度の利胆率で、βMCAよりやや低かった。αMCA,TαMCAの利胆はβMCA,TβMCAのそれと類似していた。(2)コルヒチン処理肝では、対照としたTCAが著しい胆汁欝帯を惹起するのに比し、UDCA,βMCAは正常肝での利胆の50%減程度に過ぎず、両者のタウリン抱合体はほぼ正常に近い利胆率をしめした。この事から、両胆汁酸はミセル形成能をもつ胆汁酸でありながら、微小管障害時にも利胆を保つ特性を有すると結論された。(3)コルヒチン処理肝でのTCAによる胆汁欝滞はUDCA同時添加では軽減し得ず、タウリンを前投与することでやや改善し、TUDCAの同時添加では明らかに欝滞を回避し得た。また、βMCA添加も軽減作用が明らかであるが、TβMCAの同時添加では60%の利胆を示して、最も良好であった。これらの場合、胆汁中へLDH,GOT,ALPの遊出も有意に抑制されており、利胆と共に、肝細胞の保護作用を示すものと考えられた。αMCA,TαMCAはβMCA,TβMCAより軽度な胆汁欝滞改善作用を示した。以上より7位OHがβである胆汁酸は重炭酸イオン分泌を増加させる作用と胆汁欝滞改善作用があるが、両作用はそれぞれ別であり、後者の作用は微小管に依存しない利胆作用に基ずく可能性が高いと推定された。現在は初代分離肝細胞を用いて細胞レベルでの保護作用を検討中である。
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