1.アルコ-ル(A1)性肝障害における糖蛋白の微小変異と肝細胞内蓄積:人およびラットのA1性肝障害におけるトランスフェリン(Tf)の微小変異の出現状況と肝細胞内のTfの蓄積状況について分析した。人のA1性肝障害においては、風船化した肝細胞にTfが強く染色され、血清Tfの微小変異の出現する例でより強く染色された。免疫頭顕的に検索すると、TfはA1性肝障害では滑面小胞体とGolgi装置に検出されたが、非A1肝障害ではGolgi装置には検出されなかった。ラットのA1ーピラソ-ル(A1ーPz)肝炎においても、血清のTfの微小変異が出現し、肝細胞のGolgi装置にTfの蓄積が認められた。 2.糖蛋白の肝内転送に及ぼすA1の影響:A1ーPz肝炎ラットの門脈内に^<14>Cーfucoseおよび^3Hーleucineを同時に注入し、肝細胞各分画および血清のTfへの転入状況を経時的に追跡した。A1ーPz肝炎ラットでは、コントロ-ルラットに比較して、血清Tfへのアイソト-プの転入率は明らかに低下していた。この低下は^<14>Cーfucoseで特に明瞭であった。肝細胞内のTfへの転入をみると、^3Hと^<14>Cのいずれ活性も15分で最高値を示し、120分には低値となったが、いずれの時点でもA1ーPz肝炎ラットの活性は有意に高かった。各分画の放射活性をみると、15分後では粗面小胞体とGolgi装置で、30分後ではGolgi装置での活性が高値を示したが、A1ーPz肝炎ラットでは15分後の粗面小胞体、30分後のGolgi装置での活性が有意に高かった。 これらのことから、A1性肝障害における糖蛋白の分泌障害は肝微小管の減少に伴うGolgi装置の機能障害、特に糖蛋白のglycosilationの障害によるものであり、このことがA1性障害の発現の重要な役割を果たしていると明らかになった。
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