アトピー性気管支喘息で、病態の主役を演じるIgEのFc部分に対する低親和性レセプター(FcepsilonRII)の発現状況を検討した。アトピー性気管支喘息患者では末梢血B細胞の発現比率、発現強度ともに亢進していた。これに反してT細胞では、末梢血、気管支肺胞洗浄細胞ともに発現の亢進は認められなかった。また血清の可溶型FcepsilonRII(sFcepsilonRII)の上昇は認められなかった。またFcepsilonRIIを誘導するIL-4と拮抗するinterferon-gammaが血清中で上昇しているサルコイドーシス患者においても、有意な低下は認められなかった。以上よりI型アレルギー現象の指標としては、B細胞表面の膜型FcepsilonRIIがsFcepsilonRIIより適当と考えられた。次に末梢血B細胞をin vitroでIL-4存在下に培養し、そのFcepsilonRIIの発現やsFcepsilonRIIの産生を検討したが、健常者、アトピー性気管支喘息患者、サルコイドーシス患者間に有意な差異は認められず、非刺激下のFcepsilonRII発現の亢進は、IL-4反応性の内在的変化によるものではないと考えられた。 次にIgEの高産生素因として定義したアトピー素因の責任遺伝子の、ヒトゲノム上の座位を検索するために、第11番染色体長腕の座位(11q13)のマーカーDNAを用い、その制限酵素断片長多形(RFLP)を利用し、アトピー素因との連鎖解析を行った。アトピー患者を発端とする4家系58人の家族構成員を対象とした検討では、英国での報告のような有意な連鎖は認めず、同座位ないし近傍の単一遺伝子がアトピー素因を決定しているとの結論は追認できなかった。しかし、RFLPを構成する特定のバンドの有無と血清総IgE値とは関連があり、同座位ないし近傍に存在する何らかの遺伝子が、アトピー素因の発現にある程度寄与している可能性がある。
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