肺の線維化と気腫化に及ぼす加令と環境汚染因子の関与ー喫煙とスパイクタイヤ粉麈ー

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480233
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 高橋 敬治 山形大学, 医学部, 助教授 (50004685)
• 研究分担者: 池田 英樹 山形大学, 医学部, 助手 (10175193) ; 佐藤 忍 山形大学, 医学部, 講師 (90113951)
• キーワード: 肺組識傷害 / 加令 / 肺組識弾性特性 / 喫煙 / ブレオマイシン肺傷害 / 肺の線維化 / 肺の気腫化

研究概要

<目的>___ー:肺気腫、肺線維症などの成人呼吸疾患の発生に関わる加令と喫煙、粉麈などの慢性刺激の暴露時期の関与の解明を目的とした。
方法:寿命が短く,肺組織抗酸化酵素系がヒトに近似したハムスタ-を用い、飼育後11週(C11),24週(C24),60週(C60)さらに飼育10週後および46週後にそれぞれ14週間喫煙させた群をS24,S60群とし、各群に対し次ぎの検討を行なった。すなわち摘出肺空気圧量(PV)曲線、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の細胞構成およびsurfactantの燐脂質組成と表面活性の測定、肺胞壁微小組識のLengthーTension関係、肺組識のコラ-ゲン、エラスチンの分析、光顕組識による形能計測と電顕標本による微細構造。
<結果>___ー:<加令による影響>___ーーPーV曲線上肺の弾性特性に有意差はなかった。LーT曲線の分析によりコラ-ゲン様線維、エラスチン様線維成分両者の弾性特性(a_2、a_1)は加令に伴い伸び難さを増した。加令に伴う空気圧量曲線と肺胞壁組識のLengthーTension関係における弾性特性の差異のは、(1)surfactantの特性の変化,(2)肺実組識の構造の変化による可能性が考えられた。各群のBAL液よりsurfactantを抽出し表面活性(面積張力関係)を測定した。C20に比しC60のr_<min>は有意に大で、加令に伴いsurfactantの特性が肺弾性収縮圧を増加させる方向に変化した。一方、形態計測より肺胞腔のmean linear interseptはC60で有意に増大した。<喫煙の影響>___ーーS24に比しS60の低肺気量位のCstは増加した。S60の肺胞腔は拡大し、a_2はS24より大でC60より小であった。a_1はS24,S60ともC11と変わらなかった。<まとめ>___ー:加令に伴い肺表面活性物質の特性が肺弾性収縮圧を増加させる方向に変化する。加令に伴い肺胞腔は拡大するが、このsurfactantの特性の変化により、空気肺圧量曲線上の差は見られない。加令による肺線維成分の特性の変化は生理的変動内では肺弾性特性に影響を及ぼさない。若年よりも高齢における喫煙暴露が肺surfactantに影響を及ぼし肺弾性収縮圧を減少させる。

研究成果

• [文献書誌] K.Takahashi: "Alveolar wall mechanics with growth in youth hamsters." Am.Rev.Respir.Dis.141. A928 (1990)
• [文献書誌] S.Sato: "Dose dependency of pulmonary emphysema induced by intraーtracheal elastase in rats." Am.Rev.Respir.Dis.141. A47 (1990)
• [文献書誌] S.Sato: "Dose dependency of intraーtracheal elastaseーinduced changes in pressure volume curve and morpho metry in rat lungs." Tohoku J.Exp.Med.161. 101-110 (1990)
• [文献書誌] H.Ikeda: "Pronged Iー123 IMP retention and radiographic finding in pulmonary fibrosis." Am.Rev.Respir.Dis.141. A235 (1990)
• [文献書誌] K.Osanai: "Quantitative and functional deterioration of lung surfactant in lung parenchymal injury produced by bleomycin in hamsters." Am.Rev.Respir.Dis.141. A628 (1990)
• [文献書誌] K.Osanai: "Implication of alteved alveolar surface force in the lung pressureーvolume relationship in bleomycinーinduced pulmonary fibrosis in the hamster." J.Appl.Physiol.70. (1991)
• [文献書誌] M.Mariko: "Iー123 IMP adsorption to alveolar cells and lenkocytes." Am.Rev.Respir.Dis.141. A233 (1990)
• [文献書誌] 高橋 敬治: "肺機能ー小児から成人へ" 肺と心. 38. 40-47 (1991)
• [文献書誌] 高橋 敬治: "喫煙と肺機能" 呼吸と循環. 38. 17-25 (1990)
• [文献書誌] 高橋 敬治: "肺の線維化におよぼす喫煙の影響ーBALF細胞と肺実質細胞の構成変化ー" 厚生省特定疾患ひまん性肺疾患調査研究班 平成元年度研究報告書. 70-72 (1990)
• [文献書誌] 長内 和弘: "ハムスタ-を用いたブレオマイシン肺線維症における肺サ-ファクタント異常の検討" 日本界面医学会雑誌. 21. 134-141 (1990)
• [文献書誌] 加藤 修一: "ハムスタ-のブレオマイシン実験肺線維症に及ぼすビタミンE欠乏の影響" 呼吸と循環. 38. 445-450 (1990)
• [文献書誌] 高橋 敬治: "「バイオサ-ファクタント」ブレオマイシンとサ-ファクタント" サイエンスフォ-ラム, 464 (1990)
• [文献書誌] 高橋 敬治: "「肺表面活性物質の現在」" 真興交易医書出版部, 268 (1990)