研究概要 |
気管支喘息の慢性化には好酸球による気道炎症が重要な役割を果していると考えせれている。そして気道組織内に浸潤した好酸球は種々のサイトカインや化学伝達物質により機能的に活性化されていることが示唆されている。本研究では前年度に開発した抗好酸球モノクロ-ナル抗体がいかなる活性化好酸球を認識するかを検討した。すなわち,好酸球を活性化することが知られているサイトカイン(ILー3,ILー5,或いはGMーCSF)によりヒト末梢血好酸球をin vitroで活性化させ,本抗好酸球抗体との反応性をFACSにて解析した。その結果,本抗好酸球抗体はGMーCSFと培養した好酸球とのみ強く反応し,ILー3或いはILー5と培養した好酸球とは反応しなかった。したがって,本抗好酸球抗体はヒト好酸球がGMーCSFにより活性化された際に特異的に発現される細胞表面分子を認識すると考えられた。次に,ヒト〓帯血単核球をILー3とILー5と共に4週間培養することにより好酸球のみを誘導する実験系を確立した。これにより純度90%以上の好酸球を試験管内で得ることができた。しかしこの好酸球には本抗好酸球抗体は反応しなかった。最後に,気管支喘息の発症には神経性炎症の関与が考えられていることから,サブスタンスP(SP)の好酸球活性化作用を検討した。まずSPによるヒト好酸球のECP遊離,O^-_2産生およびLTC_4産生を検討した。その結果,SPはECP遊離とO^-_2産生を惹起したが,LTC_4産生は認められなかった。この作用はC末端ペプチドSP_<6ー11>でも同様に惹起されたが,N末端ペプチドSP_<1ー9>では惹起されなかった。したがって,神経性炎症の惹起物質であるSPは好酸球を直接活性化することにより気管支喘息の発症に関与することが示された。
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