脳組織修復におけるミエリン糖蛋白(MAG)の遺伝子発現に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480239
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 佐藤 修三 新潟大学, 医学部附属病院, 講師 (30115034)
• 研究分担者: 宮武 正 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50048998)
• キーワード: ミエリン / 糖蛋白 / Myelin-associated glycoprotein / cDNAクロ-ニング / 中大脳動脈結紮モデル / クプリゾン中毒

研究概要

Myelin-associated glycoprotein(MAG)は細胞間認識、特にミエリンと神経軸索との相互認識に重要な分子であり、脳損傷後のミエリン再形成に重要な役割を担っていると考えられている。この点に関して平成元年度中に達成された成果は、以下のごとくであります。
1.オリゴデンドログリアの障害による一次性脱髄のモデルと考えられているクプリゾン中毒マウスを用いて、ミエリン再形成のモデルを確立した。
2.未熟型および成熟型のMAGのメッセンジャ-RNAに特異な合成プロ-ブを用いて、クプリゾンモデルでのミエリン再形成期に未熟型MAGが再上昇しており、発達初期のみでなく、ミエリン再形成時にも未熟型MAGが重要であることを明らかにした。
3.中大脳動脈結紮ラットを作製し、まずMAGを含めた脳蛋白の分解について検索したところ、神経細胞に特異なMAP-2蛋白とMAGが減少することを明らかにした。
4.マウスMAGのcDNAクロ-ニングにより、3種のcDNAクロ-ンを得ることができたが、その中の1種はラットでも報告されていない新しい型であった。
5.ヒトMAGのcDNAクロ-ニングに成功したが、6コのクロ-ンは全てラットおよびマウスでの未熟型MAGに相当するものであった。
6.マウスおよびヒトのMAGのcDNAクロ-ニングから明らかにされたアミノ酸配列を基に、未熟型および成熟型MAGに特異な合成ペプチドを作製し、家兎に免疫してそれぞれに特異な抗体を作ることに成功した。

研究成果

• [文献書誌] 栗原正ほか: "Developmental expression of 2′,3′-cyclic-nucleotide 3′-phosphodiesterase mRNA in brains of normal and quaking mice" Molecular Brain Research. 5. 247-250 (1989)
• [文献書誌] 佐藤修三ほか: "cDNA CLONING AND AMINO ACID SEQUENCE FOR HUMAN MYELIN-ASSOCIATED GLYCOPROTEIN" BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS. 163. 1473-1480 (1989)
• [文献書誌] 犬塚貴ほか: "Antibodies to Human Spinal Cord Proteins in Sera from Patients with Motor Neuron Disease and Other Neurological Diseases" European Neurology. 29. 328-332 (1989)
• [文献書誌] 藤田信也ほか: "cDNA CLONING OF MOUSE MYELIN-ASSOCIATED GLYCOPROTEIN:A NOVEL ALTERNATIVE SPLICING PATTERN" BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS. 165. 1162-1169 (1989)
• [文献書誌] 藤田信也ほか: "Induction of myelin-associated glycoprotein mRNA in experimental remyelination" Brain Research.
• [文献書誌] 犬塚貴ほか: "Changes in cerebral proteins following occlusion of the middle cerebral artery in rat" Stroke.