研究概要 |
myelinーassociated glycoprolein(MAG)は分子量約100KDaのミエリン糖蛋白で、その含有量は微量であるが、免疫グロブリンス-パ-ファミリ-の一員として細胞接着に重要な分子であろうと考えられている。我々はマウスのMAGのcDNAクロ-ニングを行い,ミエリン形成に伴ってalternative splicingによる2種類のMAG分子(smallーMAG:SーMAGおよびlargeーMAG:LーMAG)の発現調節が行われていることを明かにしてきた。本研究では神経組織障害後の再生の過程において、MAGがニュ-ロン・グリア間の細胞間認識分として生物学的にどのような役割を担っているか明かにし、神経組織修復の機序の解明の一助とすることを目的として行われた。2年間の成果は次のごとくである。 1)オリゴデンドログリアの代謝障害による一次性脱髄を呈するクプリゾン中毒マウスにて、ミエリン障害およびミエリン再形成のモデルを確立した。 2)中大脳動脈結紮ラットにて二次性脱髄のモデルを確立した。 3)LーMAG及びSーMAGそれぞれに特異なc末端のポリペプチドを合成し兎に免疫しそれぞれに特異な抗体を作製することに成功した。 4)クプリゾン中毒マウスにて、LーMAG及びSーMAGに特異なcDNAプロ-ブを用いてそれぞれのmRNAの発現を定量し、ミエリン再生期にもLーMAGの発現が増加していることを確認した。 5)中大脳動脈結紮ラットにて、抗MAG抗体などを用いて脳蛋白の変動を明かにした。 6)遺伝性ミエリン形成不全マウスであるquakingにて、発育を通じてLーMAGが発現していないことが明かとなり、LーMAGのミエリン形成における重要性を確認した。 7)ヒトMAGのcDNAクロ-ニングにも成功し、LーMAGのmRNAのみが確認され、進化上もその重要性が示唆された。 これらの成果から、脳障害後の修復期におけるMAG分子の特異な発現が機能的に重要であることが明かにされた。
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