研究分担者 |
有川 恵理 国立精神, 神経センター神経研究所, 流動研究員
織茂 智之 国立精神, 神経センター神経研究所, 研究生
塚原 俊文 国立精神, 神経センター神経研究所, 研究員 (60207339)
石浦 章一 国立精神, 神経センター神経研究所, 室長 (10158743)
杉田 秀夫 国立精神, 神経センター神経研究所, 所長 (80009951)
|
研究概要 |
今年度の研究はデュシャンヌ型筋ジストロフィ-症の遺伝子産物“ジストロフィン(3985個のアミノ酸から成る427kdのタンパク)"の発現様式について、遺伝子,タンパク,細胞,組織レベルから検討を加え、様々な臨床診断との対比を試みた(ジストロフィンテスト:(1)<免疫組織化学>___ー,(2)<イムノブロット>___ー,(3)<multiplexーPCR>___ー。 我々は、Kunkelらにより発表されたDMDcDNAにシ-クエンスをもとにジストロフィンに対する、(1)特異的な抗体、(2)ジストロフィン分子上の異なるドメインを認識する複数の抗体を調製して一つの生検筋を検索した。具体的には、モノクロ-ナル抗体2ー5E2,3ー4E5,4ー4C5の3者を用いれば、ほぼ目的を達する。臨床診断的側面で特筆すべきは、これまで必ずしも容易では無かった、(1)DMDとBMDの鑑別、(2)DMDとFukuyama型先天性筋ジストロフィ-の鑑別、(3)DMDといわゆる肢帯型筋ジストロファ-(一般にジストロフィンは正常)の鑑別などが可能になった点であろう。ジストロフィンテストを実施しない場合、いわゆる肢帯型筋ジストロフィ-と臨床診断されている孤発症例の中には、男性の31%にBMDが,女性の12%にDMD保因者が含まれていた。かかる症例については、適切な遺伝相談の資料としてジストロフィンテストが不可欠である(Arikawa,Arahataら;1991)。また、(4)大腿四頭筋ミオパチ-にはBMDが相当数存在する可能性も報告した(Sunohara,Arahataら;1990)。 イムノブロット法によるDMD/BMDの診断は、前述した免疫組織化学法はある意味では主観的な検査法であるので、これを補完する意味からも必須である。BMDの場合ジストロフィンは存在するが、分子量とタンパク量のいずれか或いは両者に異常が見いだされた。 multiplexーPCR法による遺伝子診断は重要である。とくにChamberlainとBeggsにより調製された36個のプライマ-を用いてこれを実施すれば、サザンブロットで見いだされる遺伝子欠失の98%が発見出来るので臨床診断的価格は高い。我々の研究室では現在、筋生検材料の一部から,または末梢血リンパ球からDNAを抽出してPCR解析を実施している。 このように本研究によって、ジストロフィンの欠陥によって生ずる臨床像の多様性が明らかにされた。
|