研究概要 |
本研究計画では、デュシャンヌ型筋ジストロフィ-(DMD)の遺伝子産物であるジストロフィンについて、臨床的,筋病理組織学的,生化学的,分子生物学的,分子遺伝学的研究を実施して来た。これは日常の診療に貢献するのみならず、今後ジストロフィンの生理学的役割を考えて行く上でも重要なステップである。おそらく近い将来“Gene Therapy"によるの根治療法を開発して行くうえでも欠くことの出来ない基礎的資料となろう。 今年度はDMD/BMDで欠陥の見られるタンパク質・ジストロフィン分子の各ドメイン構造の持つ臨床的意義を明らかにすることができた。具体的には、様々なジストロフィンテスト((1)multiplexーPCR法,(2)イムノブロット法,(3)免疫細胞化学法)の臨床診断への応用と問題点を整理しつつ、分子遺伝学的診断技術の比較検討・評価を実施した。各種ジストロフィ-筋について、ドメイン特異的抗ジストロフィン抗体(モノクロ-ナル抗体 2ー5E2,3ー4E5,4ー4C5など)を利用しジストロフィン分子の筋細胞膜における局在様式をみた。その結果、ジストロフィンの欠陥によって生ずる臨床像の多様性が明らかになり、ジストロフィン分子のN末端ドメインとC末端ドメインの重要性が明らかになった。さらに今年度の研究より明らかにされた成果として、肢帯型筋ジストロフィ-の診断がある。つまり、ジストロフィンテストを実施しない場合、いわゆる肢帯型筋ジストロフィ-孤発症例の中には、男性の31%にBMDが,女性の12%にDMD保因者が含まれていることが示された。かかる症例については、適切な遺伝相談の資料としてジストロフィンテストの実施が不可欠である(Arikawa,Arahataら;1991)。
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