研究概要 |
1)心機能の評価 NMRコイルやペ-シング・リ-ドは植え込んだがペ-シングを行わずに経過を見た対照群と,rapid ventricular pacingを5〜35日行いペ-シング中止後15分〜7日経過をみたHIBERNATION群(以下H群)のペ-シング終了直後の圧デ-タを比較すると、左室拡張期末圧と左室peak negative dp/dtに有意差を認めた。Rapid ventricular pacing中止後の心機能回復過程をみると、左室peak dp/dtはペ-シング終了60分後に有意に改善し、左室収縮期圧も120分後に有意に上昇して、ペ-シング中止後早期に収縮能が回復することが示唆された。一方、左室拡張終期圧はペ-シング中止後7日して初めて有意な改善を認め、左室拡張能の回復には比較的時間がかかることが示唆された。 2)NMRスペクトロスコピ-によるリン酸化合物代謝の評価 Phosphomonoester(PME),inorganic phosphate(Pi),phosphodiester(PDE),phosphocreatine(PCr),ATPの3つのリン酸基(αーATP,βーATP,γーATP)および標準物質HMPTのピ-クについて、対照群とH群で検討した。対照群では、手術直後に比べると全般にピ-クの減少することはあるが、手術1週間以後は比較的安定した ^<31>Pスペクトルが得られた。H群ではペ-シング前に比しペ-シング終了直後にPCrやβーATPが減少するものが多かったがばらつきがあり、全体としては有意でなかった。ペ-シング終了後3時間までのそれらの回復は少ないようであった。 3)HPLCによる心筋内高エネルギ-リン酸化合物の測定 ペ-シング終了後の心筋摘出までの時間(1時間4例、3間時2例、7日1例)と比較したところ有意差が無かったが、例数が少なく確定的でない。以上より、rapib ventricular pacingがhibernating myocardiumの研究に有用である可能性があり、今後のデ-タの蓄積が必要である。
|