研究概要 |
Prostaglandin(PG)誘導体の犬腎尿細管細胞基底側膜Na^+,K^+ーATPaseに対する作用およびその構造活性相関につき検討した。PG I_2,E_2,F_2α,PGI_2,methyl esterは各10^<-4>までNa^+,K^+ーATPase活性に影響を与えなかった。一方、ouabain,PGI_2 ethyl ester,6SーPGI_1 penthyl ester,6SーPGI_1 decyl ester,6SーPGI_1 stearylamin誘導体および6SーPGI_1 lynole amine誘導体はいずれもNa^+,K^+ーATPase活性を濃度依存的に抑制し、そのIC_<50>値はそれぞれ2×10^<-7>M,1×10^<-4>M,6×10^<-5>M,2×10^<-5>M,8×10^<-6>Mおよび8×10^<-6>Mであった。一方、6SーPGI_1 2,3ーdihydroxypropyl ester,6SーPGI_1 5ーhydroxypentyl ester,15ーdehydroー6SーPGI_1 decyl esterおよび6Sー13,14ーdihydroーPGI_1 decyl esterにはNa^+,K^+ーATPase活性に対する抑制活性は10^<-4>Mまで認められなかった。さらにLineweaverBurk plotにより、これら抑制活性を示すPG誘導体のNa^+,K^+ーATPase活性に対する抑制活性はK^+と競合していた。また、IC_<50>を与える濃度のuabain,6SーPGI_1 decy ester,6SーPGI_1ーstearylanine誘導体の添加は全て、輸状動脈標本の張力の基礎値には短期(10分以内)に影響を与えなかったが、norepine phrine(4×10^<-6>M)依存性収縮を著明に増強した。PG誘導体のNa^+,K^+ーATPase活性抑制作用発現にはPGIのC_1部に疎水性の長鎖脂肪が結合し、C_<13>,C_<14>位間の2重結合およびC_<15>位の=0がintactに保たれていることが必要である。これらPG誘導体はK^+結合部位に対する結合阻害を示し、血管張力増強作用もouabainに類似していた。生体内においてPGの代謝産物が内因性ジギタリス様物質として働いている可能性がある。
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