研究概要 |
(1)腎以外の臓器内におけるレニンの細胞内存在様式および生合成過程の検討:神経細胞の実験モデルとして確立しているマウス神経芽細胞腫(Neuroー2a)をRPMI1640培地にて培養し,そのホモジネイトから,分画遠心法により核(P_1),重ミトコンドリア(P_2),その上清(S_2),軽ミトコンドリア(P_<2'>),マイクロゾ-ム(M)および可溶性分画(S)に分離し,各分画中のレニン濃度を測定したところ,P_2が最も高値(>70%)であった。P_2をさらにPercoll(35%)を用いる密度勾配遠心法により分離したところ,レニンは2つのdensityの異なる分画(1.05および1.10g/ml)に認められた。この高比重分画のレニンはライソゾ-ムおよびミトコンドリアの標識酵素分画とは一致しなかったが,低比重分画のレニンはライソゾ-ム酵素分画と一致した。そこでこの分画を再度Percoll(25%)により分離したところ,ライソゾ-ム分画とは明らかに比重の異なる分画に検出された。次に ^<35>Sーmethionineを用いて,これらのレニンの生合成過程を検討したところ,標識開始45分後にすでに低比重分画のレニンの合成が認められ,2時間後には高比重分画のレニンが認められた。オ-トラジオグラムによるこれらのレニンの分子量はともに44Kであった。さらに,レニンを ^<35>Sーmethionineに26時間標識後,培養液を変えて0〜24時間chaseしたところ,低・高比重分画とも培養液中に放出されることが確認され,その分子量は44Kであった。(2)レニン放出の検討:培養Neuroー2aの培養液中にKCl(40mM)またはカルシウムイオノフォア(10μM)を添加すると,培養液中のレニン活性はそれぞれ約2倍,約3.5倍に上昇した。(3)結論:レニンは神経細胞内で生合成され,比重の異なる大小2つの顆粒分画中に貯蔵されると考えられる。神経細胞のレニンは腎レニンと異なり,細胞内カルシウムの上昇により細胞外に放出され,アンジオテンシンII生成を介して自律神経機能や血圧調節に何らかの役割を演ずると推察される。
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