研究概要 |
〈目的〉腎以外の臓器からのレニンおよびアンジオテンシンの放出の有無ならびにその機序を明らかにする。〈方法〉(1)雄性SpragueーDawley系ラットの後肢血管を,Kreb_5Ringer緩衝液にて潅流(流速4ml/min)し,潅流液中のレニン活性,アンジオテンシン(A)IおよびAIIを測定した。次いで,潅流液中にAI変換酵素阻害剤(カプトプリル,デラプリル),プロスタグランディン合成阻害剤(インドメタシン),β遮断剤(プロプラノロ-ル),β刺激剤(インプロテレノ-ル)あるいは特異的AII受容体拮抗剤(MKー954)を添加し(いずれも10^<ー9>〜10^<ー6>M),レニン,AI,AII放出の変化を検討した。(2)ヒト臍帯静脈をKreb_5Ringer液にて潅流(流速6ml/min)し,カプトプリル,デラプリル,あるいは特異的ヒト・レニン阻害剤(KRー拐1314)のレニン,AIおよびAII放出に対する効果を検討した。〈結果〉(1)単離後肢からのAIおよびAIIは,潅流開始後少なくとも3時間は一定であった。これに対し,レニン活性は潅流液中に全く検出されなかった。カプトプリル,デラプリルあるいはインドメタシン(いずれも10^<ー6>M)の添加により,AII放出はそれぞれ約54%,61%,50%低下した。一方,プロラノロ-ルおよびイソプロテレノ-ルは,AI,AII放出に影響を与えなった。MKー954(10^<ー6>M)添加により,AI放出は約4倍,AII放出は約3倍に上昇したが,レニン活性は潅流液中に全く検出されなかった。(2)ヒト臍帯静脈の潅流系において,レニン活性は潅流液中に検出されなかったが,AIおよびAII放出は少なくとも2時間は一定の割合で認められた。AII放出はカプトプリルにより約45%,デラプリルにより約60%,KRIー1314により約75%低下した。〈考案ならびに結論〉血管壁には独自のレニン・アンジオテンシン系が存在すると考えられる。血管組織中のレニンは福腎皮質や神胞中のレニンとは異なり細胞外には放出されず細胞内においてアンジオテンシンを生成することにより, 血管低抗の調節に関与するものと推察される。
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