研究概要 |
〈目的〉腎以外の各種臓器におけるレニンの生理的役割を明らかにするため,レニンの細胞内局在,生合成過程ならびに放出の有無とその機序を検討した。〈方法と結果〉1.雄性SpragueーDawley(SーD)系ラットの副腎皮質におけるレニンの細胞内局在を分画遠心法により検討したところ,レニンは主として重ミトコンドリア分画に検出された。これをさらにPerellを用いる密度勾配遠心法により分離したところ,レニンはミトコンドリアおよびライソゾ-ムよりもより比重の大きい顆粒分画に分離された。次に,SーD系ラットの副腎皮質球状層を組織培養し,培養液中にアンジオランシン(A)II,カルシウムイオノホア(CaーI)またはエンドセリンを添加し,培養液中のレニン活性を測定したところ,レニンはAIIにより約3倍,エンドセリンにより約2.5倍,CaーIにより約3倍に上昇した。2.マウス神経細胞由来のNeuroー2a細胞(Nー2a)を継代培養後,培養液中に ^<35>Sーmethionineを添加し,持異的抗レニン抗体を用いる免疫沈降法およびウェスタンブロッティング法によりレニンの生合成過程を検討した結果,レニンは分子量約40Kの活性型として、比重の異なる大・小2つの顆粒分画中に貯蔵されることが判明した。Nー2aを ^<32>Sーmethionineにて標識後,レニンの動態を検討したところ,レニンは時間依存性に放出されることが明らかになった。3,SーD系ラットの後肢およびヒトの臍帯静脈をKrobsーRinger液にて潅流し,潅流液中のレニン活性,AIおよびAIIを測定したところ,レニンは全く検出されなかったが,AIおよびAIIは教時間一定の割合で検出され,AIIの放出は変換酵素阻害剤により明らかに抑制された。〈総括〉神経細胞ならびに副腎皮質球状層細胞のレニンは分泌顆粒として貯蔵され,細胞外に放出されてのち,AII生成にかかわり、血管壁レニンは細胞内においてAIIを産生し,自律神経機能やアルドステロン分泌あるいは血管低抗の調節に関与するものと推察される。
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