研究概要 |
分離操作に伴う非特異的刺激によるモノカイン産生を避けるため、全血の状態で刺激を加える方法(全血法と略)でヒト末梢血単球のIL-1,IL-6,TNF産生能を検討した。刺激後、単核細胞を分離し、特異抗体による免疫組織染色、in situ hybridization法などでこれらのモノカインを胞体内に保有する細胞の蛋白レベル、mRNAレベルでの同定を試み、形態的に、また、膜抗原の発現状態からみて、末梢血ではこれらのモノカインの主たる産生は単球によるものであることを明らかにした。 LPS,Con A刺激、大腸菌、B群溶連菌、リステリア菌(生菌、死菌)による刺激、あるいは、ラテックス、ザイモザンなどの貧食による刺激などによるモノカイン産生能を臍帯血、成人末梢血について比較したが、いずれの刺激に際しても産生のカイネティクス、産生量などに有意な差を見いだし得ず、ヒト末梢血単球の重要なエフェクタ-機能の一つであるモノカイン産生能は、生下時既に成人のレベルに達しているものと考えられた。検索し得た限りでは1800gm以上の未熟児のモノカイン産生能には成熟児と間に差はなかった。一例の超未熟児(950gm)で著しいモノカイン産生能の不良が観察されたが、RDS予防の目的で母体にステロイド剤が投与されており、その影響を除外しえなかった。 また、骨髄移植に際してはステロイド、サイクロスポリンAが使用されることが多く、これらの薬剤による影響をin vitroで検討し、少なくともIL-6産生に関しては、ステロイドはかなり抑制的に働くが、サイクロスポリンの影響は少ないことが確かめられた。 また、CD4+,CD45RA(naive),CD4+,CD45RO(memory)サブセットにつき年令推移、CD2-,PPD-依存性増殖能、免疫グロブリン産生におよぼすヘルパ-能の差、in vitro刺激によるCD45RA→CD45ROの形質変換に伴う機能の変化についても解析を進めており、成績の一部は印刷中である。
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