研究概要 |
種々の細菌刺激による末梢血単球のILー6産生能を臍帯血、成人末梢血について全血法で検討した。生下時体重1,800gm以上の児では単球のILー6産生能はすでに成人のレベルに達していたが、在胎30週未満、体重1,500gm以下の極小未熟児にあってはILー6産生能は不良であり、単球のモノカイン産生能は在胎30週前後に成熟に達するものと考えられた。また、少数例ではあるが、骨髄移植後のILー6産生能も早期に回復することが確かめられている。 ヒト臍帯血T細胞のCD45抗原ファミリ-の発現状態をみると、その殆どがCD45RA陽性であり、メモリ-T細胞のマ-カ-とされるCD45RO抗原の発現はみられない。このようなナイ-ブ形質の臍帯血T細胞も、種々の刺激を受けることによりCD45RAーーCD45ROの形質変換が起こり、それに伴ってILー4,ILー5,IFNーγなどのリンホカイン産生能を獲得するに至ることが蛋白質レベルで、また、PCR変法によりmRNAレベルで確かめられた。さらに、臍帯血CD4^+CD45RA^+T細胞にはヘルパ-活性はみられないが、<in>___ー <vitro>___ーでCD45RO形質を獲得させると弱いながらヘルパ-活性が誘導される。また、CD45RA^+(ナイ-ブ)CD4^+細胞とCD45RO^+(メモリ-)CD4^+細胞の抗CD2抗体に対する増殖能の違いを検討し、メモリ-T細胞では抗CD2抗体刺激によりILー6が産生され、オ-トクライン機構により増殖がみられるが、ナイ-ブT細胞ではILー6産生はみられず、増殖も起こらないことなどが明らかにされた。 小児の成長に伴い末梢血CD45RO陽性T細胞の比率が増加するが、ウイルス感染に際して著しいCD45RO抗原の発現のみられることなどから類推すると、ヒトのCD45RO陽性T細胞は生後に受けた抗原刺激の総和を示すものとも考えられる。しかし、骨髄移植後にはアロ、オ-トを問わずCD45RO陽性T細胞の著増が見られ、この現象の解明は今後に残されている。
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