研究概要 |
本研究の目的は表皮細胞の細胞間接着構造およびその形成と脱着の制御(シグナル伝達)に関する正常と病的状態の解明である。表皮細胞は低Ca^<2+>培地中ではデスモソ-ム(DS)を形成しないが、Ca^<2+>添加でこれを形成する。我々はこの系においてCa^<2+>添加直後(30秒〜15分)からイノシト-ルリン脂質の分解とジアシルグリセロ-ル、イノシト-ル3燐酸の生成、プロテインキナ-ゼC(PKC)の活性化を認め、このPKCの活性化がDSの構成分子であるデスモプラキンの細胞質から膜への移行とDS形成に深く関与することを平成元年度に報告した。 平成2年度はこのCa^<2+>添加によって活性化されるPKCの基質に関して、既知のPKCの基質であるリポコルチンI(LPCI、これはEGFの基質でもある)がCa^<2+>添加で細胞質から膜へ移行すること、LPCIが尋常性乾癬では正常とは異なって細胞膜に移行していること,その一部がCa^<2+>結合型であることを見出した。しかし、LPCI自身はリン酸化されなかった。そこでPKCの別の主たる基質として知られている分子量80KD蛋白(この蛋白は脳、線維芽細胞等広く分布しているが、機能は不明で、表皮細胞では知られてない。)について検討した結果、この蛋白は表皮細胞にも十分量存在し、Ca^<2+>添加直後にリン酸化量が50%以上上昇し、かつ細胞質からトリトンX100不溶性画分に転移した。 平成3年度はヘミデスモソ-ム180KD蛋白のCa^<2+>誘導分化表皮細胞系における分布変化、ホルボ-ルエステル(TPA)処理による分布変化を観察し、ヘミデスモソ-ムの形成と分解にPKCが関与していることを示唆する結果を報告した。 細胞間接着障害性皮膚疾患に関しては,単純型表皮水疱症2例について前に培養表皮細胞においてケラチンの分布異常と滴状化を発見していたが、さらに症例を重ねてその分布異状に2型ある可能性を報告した。
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