研究概要 |
当該年度の研究は、当初の研究計画を若干変更し、本研究課題の解析にきわめて重要と考えられる。T細胞の表皮向性浸潤の抑制機序について多くの実験を行い、以下の結果を得た。 1)表皮向性T細胞を同系マウス足蹠へ移入することにより惹起される表皮構築の破壊は、速やかに回復するが、以後同じ部位に表皮向性T細胞クロ-ンを移入しても表皮構築の破壊は全くみられない。このような表皮抵抗性は1年以上続き、クロ-ンを移入した局所のみに認められる現象である。この表皮抵抗性の発現には、Thy1^+ epidermal cell(Thy1^+ EC)の著明な増加が必要であった。(研究業績#1) 2)この表皮抵抗性の発現には、胸腺の存在が必須であり、胸腺剔除マウスやnudeマウスでは、この抵抗性の発現は全く認められなかった。(研究業績#2) 3)この表皮抵抗性を担うThy1^+ ECは、いわゆるγδ^+ Thy1^+ DECと異りCD8^+であり、種々の腫瘍細胞に対しkiller活性を示すのみならず、表皮向性T細胞クロ-ンに対しても著明なkiller活性を示した。表皮向性クロ-ンによる表皮構築の破壊後、表皮内に増加してくるCD8^+ Thy1^+ ECは、表皮向性T細胞クロ-ンを傷害することにより表皮構築を守る役割を果していると考えられた。 4)表皮向性クロ-ンのGMーCSF,ILー1,ILー6レセプタ-の発現を検討したところ、いずれのレセプタ-の発現も認められた。しかし表皮向性を示さないクロ-ンとの間に、レセプタ-発現のパタ-ンの著明な差違は認められず、これらのレセプタ-発現がT細胞の表皮向性発現を決定している可能性は考えにくいと思われた。
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