放射線治療ではできるだけ多くの癌細胞を殺し、正常組織の障害を少なくし、その回復を促すことが重要である。血流に依存する薬剤と違い放射線は照射野組織内の放射線の分布に従い確実に細胞に到達する。放射線作用の効果の違いは、細胞組織の生物学的生理学的な違いを利用して、放射線を分割照射することにより生ずる。 本研究では、放射線感受性に関与する因子のうち、1)組織p0_2、エネルギ-代謝状態(^<31>P-MRS測定)、及び血流に焦点を合わせ、両組織間に生物学的、生理学的にどんな違いがあるか、さらに2)それらの放射線照射後の変化の違いを解明すること、また3)将来、臨床でヒトに応用し、放射線リスポンスの先行指標として役立つ方法の開発を目的とする。 本年は、これまで実験腫瘍系として転移や照射実験に使用してきた自然発生由来(C3H/Heマウス)の腺維肉腫NFSA2ALM1及び扁平上皮癌NRS1を用い、下肢移植腫瘍の成長過程及び正常組織(下肢)のp0_2、^<31>P-MRSによるエネルギ-状態、Laser Doppler法(本研究費で測定器を購入)による血流変化の解析を試みた。基礎的なデ-タ、更にX線照射後の両組織の、p0_2、エネルギ-状態についてもデ-タが出はじめているので、第2年度目以降に結論が出せるように進行中である。いわゆる腫瘍のReoxygenationの過程で両組織がどうなっているかの解析も進めている。Reoxygenationの過程がコロニ-形成による生存率曲線から想定された結果と同じかどうかの検定もはじめた。
|