研究概要 |
本研究が始った平成元年度は、わが国のヨ-ド造影剤の副作用に関する特筆すべき年であった。それは35万例にも及ぶ症例を用い、イオン性高浸透圧ヨ-ド造影剤と非イオン性低浸透圧ヨ-ド造影剤の副作用の比較検討の日本製のデ-タが世界に認められたからである。このような大規模な比較調査は、この時期をはずして、この種の調査は不可能であったと考えられる。平成元年度は更にデ-タを整理し、綿密な統計処理を行い、世界的著明な学術誌であるRadiologyに発表した(Radiology 175:621ー628,1990)。この論文は現在でも“片山レポ-ト"として国際的に利用されている。平成元年度は、更に低浸透圧造影剤のみに限った小規模な調査に着手した。平成元年度後半以降、米国FDAをはじめ多くの問い合わせが集中したので、平成2年度においては、更にデ-タの統計的分析を行った。特に造影剤の副作用に対するリスク因子を、オッズ比で表わすべく努力を行った。 この解析は平成3年度まで継続し、国際的舞台で発表することができた。これはまた高い評価を受け、内容は国際的研究誌に発表した(Investigative Radiology 26(Suppl.1):s33ーs36,1991)。一方、平成元年度に着手した低浸透圧造影剤に限った小規模な調査の結果は、平成2年度に第1報を、更に症例を重ねて第2報を発表することができた(日本医報会誌51(6):632ー642,1991.第2報は同会誌印刷中)。平成元年度〜平成3年度に至った本研究は、学問的のみならず、臨床面において、更に医療経済の面においても、大きなインパクトを与えるものとして完結した。この他、3年間に本研究の代表者ならびに分担者が関係した論文は16編に及んでいる。
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