研究概要 |
世界的規模で臨床第3相試験が実施された放射線増感剤Misonidazoleは神経毒性発現のため有効増感効果が得られるまで投与量を上げることができず臨床応用は実現しなかった。そこでMisonidazoleの低毒化、高活性化を目標に第2世代の増感剤開発が進められた結果、水溶性側鎖の導入により神経毒性の軽減をはかったEtanidazoleが開発され現在臨床第2、3相試験が実施中である。我々は血液ー脳関門を通過し難いとされる核酸誘導体の増感剤への導入を検討してきたが昨年度までに2ーニトロイミダゾ-ル核酸誘導体RPー170がEtanidazoleに匹敵する可能性について示唆する予備実験結果を得ている。そこで本年度はRPー170の増感剤としての可能性について体内分布およびお毒性を中心に検討した。一般に化合物の急性毒性、特に脳神経系への移行度はその脂溶性に関係がある。脂溶性はoctanolと水との分配係数Pで表され、0.43という高いPを示すMisonidazoleは脳へも腫瘍と同程度移行する。一方、PRー170はEtanidazole(p=0.046)と同様Misonidazoleの1/10のP値0.069を示した。EMT6腫瘍担癌Balb/cマウスにi.v.,i.p.投与後のRPー170の薬物動態をHPLCで検討した結果、Etanidazole同様血中、腫瘍内濃度の速やかな上昇の後ただちに排泄され投与4時間後ではほとんど検出されなかった。脳への移行はわずかであった。Beagle犬においてもPRー170、Etanidazole(100mg/kg,i.v.)はほとんど同じ血中消失曲線を示した。但しp.o.投与ではPRー170の血中、腫瘍内濃度は約80%に低下する程度でありp.o.投与の可能性が示唆されたがEtanidazoleはRPー170の約50%の吸収濃度であった。マウスのLD_<50>はi.v.投与でRPー170、Etanidazole各々4.3,4.8g/kgでありMisonidazole(1.8g/kg)に比べ非常に低毒性であった。RPー170のLD_<50>はマウス、ラット共一回投与ではp.o.>i.v.、連投ではp.o.<i.v.であった。以上RPー170は増感活性と同様、薬物動態、毒性においてもEtanidazoleに追随する増感剤であることが明らかになった。今後p.o.投与に於てEtanidazoleより優位に立つことが判明したRPー170の至適投与法について、薬物動態、毒性を中心に研究を進めたい。
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