研究概要 |
代表的な向精神薬であるクロ-ルプロマジン(CP)10mg、20mg/kg、ハロペリド-ル(HD)1mg、2mg/kgをそれぞれ1日2回3週間ラット腹腔内に投与、大脳皮質、海馬及び線状体より膜画分を作製、次項に記す研究成果をえた。 1.活性化した百日咳トキシン(IAP)溶液を膜画分に添加しADPリボシル化反応を行い標識ADP-リボシル化量を測定することによりGi/Go量を定量した。SDS-PAG電気泳動によってGi/Goを分離(それぞれ41Kと39Kを示す)、そのオ-トラジオグラフィ-からGi/Go量を同定した。本法により、CP、HP慢性投与による影響を検討した結果、脳内各部位で対照群と有意の差が得られなかった。この結果は向精神薬がGi/Goに直接及ぼす可能性を否定している。 2.炭酸リチウム含有エサをラットに2週、4週、7週間投与、同様の方法でGi/Go量の分離同定を行った。現在、一定の結果を得ていないが、リチウムがADPリボシル化の酵素反応過程に及ぼす影響を無視できないためと思われるため、さらに検討中である。 3.精神分裂病の脳内各部位について、本法を用いて検討を行った。 これらの症例は全例、向精神薬を服用しており、何らかの影響があればGi/Go量に変化が出現する可能性が考えられた。その結果、精神分裂病では対照群と比較して、左海馬と左被殻でのみ対照群より低下していた。このように左側の側頭部でのみGi/Go量が低下していたことは向精神薬による影響が片側にのみ及んだと考えなければならず、むしろ、精神分裂病の病的過程との関連が推定された(J.Neural Transmission 79:227-234,1990)。
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