モノクロ-ナル抗体を用いたアルツハイマ-病脳内異常構造物に関する生化学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480281
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 深津 亮 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (10113614)
• 研究分担者: 相沢 裕二 札幌医科大学, 医学部, 助手 (60202446) ; 高畑 直彦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20000987)
• キーワード: Alzheimer's disease / PHF / Amyloid / monoclonal antibody / βーprotein / amyloid precursor protein

研究概要

アルツハイマ-病に特徴的な異常沈着物である原線維変化(PHF)を老人斑アミロイド(Am)の構成分と形成過程を明らかにするために、これらの異常構造物に特異的なモノクロ-ナル抗体を樹立し、そのエピト-プの解明を続けており、現在までに以下の結果を得ている。
1.1Amに対するmcAb;10クロ-ンのmcAbを樹立した。Amの既知の成分(βーペプチド、前駆体蛋白、補体成分、P成分、αiーACT)との反応を調べたところ、4クロ-ンのエピト-プが決定された。それぞれβーペプチド、補体C3、C4、BPIであったが、残りの6クロ-ンのmcAbは未知の成分を認識している可能性があり、更にエピト-プの解析を行っている。βーペプチドを認識するmcAbについては、エピト-プ、マッピングを行い、ヒトβーペプチド(4ー10アミノ酸)に特異的で、前駆体蛋白をも認識するユニ-クな抗体であることが分った。この抗体を用いて前駆体蛋白の分解・沈着過程を調べている。
2.PHFに対するmcAb;21クロ-ンのmcAbを樹立した、既知成分(NFタウ、ユビキテン)と反応するクロ-ンが約半数みられたが、このうち興味ある抗体を選別してエピト-プ・マッピングを行う予定である。残りの半数は未知の成分を認識していると考えられ、エピト-プの同定に努めている。
3.老人斑関連構造物を認識するmcAb;老人斑周辺の点状構造物を認識する全く新らしいmcAbが2クロ-ン得られた。免疫病理学的にその特徴を明らかにした。
以上の通り異常構造物に特異的な興味あるmcAbを多数樹立することができた。次年度は、エピト-プの同定・精製を生化学的、分子生物学的手法を用いて行い、アルツハイマ-病の異常構造物の形成過程ひいては病因解明に努力を傾ける予定である。

研究成果

• [文献書誌] 深津亮ら: "Alzheimer病へのモノクロ-ナル抗体によるアプロ-チー原線維変化、老人斑の免疫病理を中心にー" 精神神経学雑誌. 91. 751-760 (1989)
• [文献書誌] 深津亮: "Alzheimer病とモノクロ-ナル抗体" 老年期痴呆研究会誌. 3. (1989)
• [文献書誌] Y.Aizawa,R.Fukatsu et al: "Monoclonal antibodies against senile plaque amyloid in Alzheimer's disease." Proceedings of the 2nd International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Disease.,Plenum press.,.
• [文献書誌] Y.Takamaru,R.Fukatsu et al: "Monoclonal antibodies against paired helical filament in Alzheimer's disease and Parkinsonismーdementia complex of Guam." Proceedings of the 2nd International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Disease.,Plenum Press.,.
• [文献書誌] R.Fukatsu et al: "Monoclonal antibody specific to human Bーprotein recognizes soluble derivatives od amyloid precursor protein from the supernatant of Hela cell culture."
• [文献書誌] R.Fukatsu et al: "A novel monoclonal antibody specific to senile plaque associated structure in Alzheimer's disease."