モノクロ-ナル抗体を用いたアルツハイマ-病脳内異常構造物に関する生化学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480281
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 深津 亮 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (10113614)
• 研究分担者: 藤井 充 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80199299) ; 高畑 直彦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20000987)
• キーワード: アルツハイマ-病 / アミロイド / アミロイド前駆体蛋白 / serum protein 40ー40 / βー蛋白

研究概要

アルツハイマ-病の特徴的な異常沈着物である神経原線維変化(NFT,PHF)と老人斑(アミロイド斑)(Am)の構成成分を明らかにし、その形成過程を解明するために、以下の実験を行った。
1)アミロイド前駆体蛋白(APP)の各ドメインに対するmcAbの樹立;APPのアミノ酸配列に従って3部位の合成ペプチドを作成して、これを抗原としてmcAbを作成した。βペプチド部分、細胞外ドメインに対するmcAbは樹立することができた。しかし、インヒビタ-・ドメインに対する抗体価の高い抗体は得られなかった。このため再度、樹立を試みている。またクロ-ニングされた2種類のAPP遺伝子をE.coliに発現させ分離精製し、これを抗原としてmcAbの樹立を現在試みている。
2)mcAbのエピト-プの解析;これまでに樹立したAmに対するmcAbのAPPに対する反応性を調べた。強く反応する1クロ-ンを見いだしたので、種々の長さの合成ペプチドを用いて、エピト-プ・マッピングを行った。その結果、このmcAbはヒトβ4ー10のペプチドを特異的に認識することが明らかになった。興味あることに、この抗体はある種の細胞培養液中に遊離するsolubleなAPPを認識した。このことはAPPのプロセシングには細胞により相違のあることを示唆している。同種の手法によりヒトβーペプチドに対する多数のmcAbののエピト-プ・マッピングを終えている。
3)未知の構成成分の同定;アミロイドの未知の構成成分を認識するmcAbを用いて、その構成成分の同定を試みている。未知成分を認識する2つの抗体が80kDaの血清蛋白と反応した。mcAbを用いてアフィニティ・クロマトグラフィさらにHPLCを行って、この蛋白を精製してdirect microsequencingによりアミノ酸配列を決定した。アミノ酸配列のホモロジ-検索を行い、serum protein40ー40と一致することがほぼ明かとなった。この蛋白は、ごく最近、同定されたばかりで機能については不明であるため、脳内での機能について調べる予定である。

研究成果

• [文献書誌] 深津 亮、: "Alzheimer病へのモノクロ-ナル抗体によるアプロ-チー原線維変化、老人斑の免疫病理を中心にー" 精神神経学雑誌. 第91巻. 751-760 (1989)
• [文献書誌] Yuji Takamaru,: "Monoclonal antibodies against paired herical filament in Alzheimer's disease and Parkinsonismーdementia complex of Guam." Proceedings of The 2nd International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Disease.,Plenum Press.,in press.
• [文献書誌] Yuji Aizawa,: "Monoclonal antibodies against senile plaque amyloid in Alzheimer's disease." Proceedings of The 2nd International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Disease.,Plenum Press.,in press.
• [文献書誌] Yuji Aizawa,: "Immunohistochemical studies of amyloid deposition in Alzheimer's disease using monoclonal antibodies against native amyloid."
• [文献書誌] Ryo Fukatsu.: "Monoclonal antibody raised against native amyloid recognizes soluble amyloid precursor protein from certain cell culture."
• [文献書誌] Yuji Takamaru,: "Serum protein 40ー40 is involved in amyloid plaque formation in Alzheimer's disease."