研究概要 |
多くのペプチドホルモンは前駆体として産生され、蛋白分解酵素やアミド形成酵素の作用によって小さな生理活性ペプチドに変換される。一般にアミド化をうけたペプチドは、うける前に比して,生理活性が10^2〜10^4高く、アミド化反応はペプチドの生理活性化に重要である。しかし、高いアミド化酵素活性が認められても、アミド化ペプチド産生が知られていない内分泌細胞(例えば下垂体前葉細胞)があり、アミド化ペプチドの産生能がないのか、アミド化を必要とする前駆体ペプチドがないのか分っていない。我々はペプチド構造が簡単で、アミド化をうけて生理活性ペプチドとなる膵ポリペプチド(PP)cDNAを動物細胞発現ベクタ-に組み込み、内分泌細胞(GH3,AtT20,RINm5F,PC12)と、非内分泌細胞(NIH3T3,HEPA1-6,BHK21,AR42J)に導入し、PPを発現させた。内分泌細胞でアミド化ペプチド産生能が予想されるのは、Neuropeptide Yを産生しているPC12だけで、他はGH3がGrowth hormoneとProlactin,ACT20がACTHとβ-Endorphine,RINm5Fがinsulinというように、アミド化を必要としないペプチドを産生している。しかし、アミド化酵素活性はいずれの内分泌細胞でも高かった。PPの分析には前駆体と、切断されたペプチド両方を認識しアミド部分を認識しない抗体S3と、前駆体は認識せず、アミド部分に特異的な抗体S11を用いた。PPcDNAを導入した4種の非内分泌細胞はPP前駆体を産生したが、アミド化PPは産生しなかった。対照的に4種の内分泌細胞はPP前駆体と共にアミド化ペプチドを産生した。ゲル濾過ではS3に反応するPPは2峰性に分れ、後方の峰は合成PPの位置と一致したので、前方の峰はPP前駆体と思われる。S11に反応する峰、即ちアミド化PPは後方の峰と一致した。この実験から、アミド化ペプチド産生が知られていない内分泌細胞でも、アミド化を必要とするペプチドcDNAを導入すると、発現ペプチドをアミド化できることが分った。
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