研究概要 |
多くのペプチドホルモンは前駆体として産生され、内分泌細胞中の分泌経路を通過する過程で生理活性ペプチド配列に隣接する塩基性アミノ酸対部分が特異的蛋白分解酵素で切断を受ける。生理活性ペプチドのカルボキシル(C)端は多くの場合Glyで、これが更にアミド化酵素で分解を受け、C端アミドが形成される。これらの蛋白分解酵素やアミド化酵素は神経内分泌細胞に特徴的に存在し、上皮細胞や線維芽細胞のような非内分泌細胞には存在しない。我々はペプチドC末端アミド化能が内分泌細胞の一般的特徴であることを証明するために、アミド化ペプチド産生が知られていない内分泌細胞(例えば下垂体前葉細胞)も含めて種々の内分泌細胞でアミド化ペプチド産生能を検討した。アミド化ペプチド産生能は、アミド化をうけて生理活性ペプチドとなるガストリンcDNA及び、膵ポリペプチド(PP)cDNAを動物細胞発現ベクタ-に組み込み、内分泌細胞(GH3,AtT20,RIN5F,PC12)に導入し、産生されたペプチドをガストリン及びPPのC末端特異的抗体を用いて調べた。内分泌細胞は前駆体からアミド化ペプチドを産生する過程に程度の差はあるが、すべてアミド化能を有していた。同じ実験を非内分泌細胞(NIH3T3,BHK21,Hepalー6)を用いて行うと、これらの細胞ではガストリン,PP共にアミド化を受けない前駆体が産生された。従って、アミド化ペプチド産生が知られていない内分泌細胞でも、アミド化され得るペプチドcDNAを導入すると、発現ペプチドがアミド化されるが、非内分泌細胞では導入ペプチドのアミド化はおこらない。そこでは、アミド化酵素cDNAを非内分泌細胞に導入すると非内分泌細胞はアミド化能を有するようになるだろうか。我々はアミド化酵素cDNAをNIH3T3やCOSー7のような非内分泌細胞で発現させることに成功したので、現在アミド化され得るペプチドcDNAを同時発現させる実験を進行させている。
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