エンドセリンの細胞レベルでの作用機序と合成と分泌機構に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480286
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 平田 結喜緒 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (50135787)
• キーワード: エンドセリン / レセプタ- / 血管収縮因子 / ホルモン / 合成と分泌機序 / 増殖因子 / 構造活性相関 / 腎上皮細胞

研究概要

エンドセリン-1(ET-1)は血管平滑筋細胞(VSμc)に特異的受容体が存在し、細胞内遊離Ca^<2+>濃度(〔Ca^<2+>〕i)を著増させる。そこで種々のET-1アナログを用いてVSμcでの受容体結合能と〔Ca^<2+>〕i反応を検討した結果、ET-1分子内に存在する2箇所のS-S結合およびN末端およびC末端の存在が作用発現に必要であることが明らかとなった。また蛇毒のサラフォトキシン(STX)SbbもET-1受容体へ結合し、〔Ca^<2+>〕iを上昇させるがその作用はET-1より弱かった。STXとET-1の構造類似性から、STXがET-1受容体へ直接結合するためと推定される。ET-1は血管収縮作用のみならず、VSμcのDNA合成を著明に促進する。ET-1は他の成長因子であるEGFと相乗的に作用するが、DNA促進作用はCa^<2+>拮抗剤によって完全に抑制された。以上の事実からET-1は動脈硬化の血管障害発生に関与する増殖因子である可能性が示唆される。我々はET-1に特異的なradioimmuunoassay(RIA)を開発し、正常ヒト血中にET-1が存在するか否かを検討した結果、微量(1pg/ml)のET-1様免疫活性が検出された。したがってET-1は循環ホルモンとして生理的あるいは病態生理学的役割を担っている可能性が強い。ET-1は血管内皮細胞で合成、分泌されているが、我々は非内皮細胞である腎上皮細胞(LLCPK、MDCK)からもET-1が多量に合成、分泌されていることを見い出した。この事実はET-1が単に血圧調節のみならず、腎機能の調節にも関与する局所ホルモンである可能性を示唆する。

研究成果

• [文献書誌] Y.Hirata,H.Yoshimi,T.Emori,M.Shichiri,F.Marumo,T.X.Watanabe,S.Kumagaye,K.Nakajima,T.Kimura,S.Sakakibara.: "Receptor binding activity and cytosolic free calcium response by synthetic endothelin analogs in cultured rat vascular smooth muscle cells" BIOCHEM.BIOPHYS.RES.COMMUN.160(1). 228-234 (1989)
• [文献書誌] Y.Hirata,H.Yoshimi,F.Marumo,T.X.Watanabe,S.Kumagaye,K.Nakajima,T.Kimura,S.Sakakibara.: "Interaction of synthetic sar afotoxin with rat vascular endothelin receptors" BIOCHEM.BIOPHYS.RES.COMMUN.162(1). 441-447 (1989)
• [文献書誌] Y.Hirata,Y.Fukuda,H.Yoshimi,T.Emori,M.Shichiri,F.Marumo: "Specific veceptor for endothelin in culturedrat cardiocytes" BIOCHEM.BIOPHYS.RES.COMMUN.160(3). 1438-1444 (1989)
• [文献書誌] Y.Hirata,Y.Takagi,Y.Fukuda,F.Marumo: "Endothelin is a potent mitogen for rat vascular smooth muscle cells" Atherosclerosis. 78. 225-228 (1989)
• [文献書誌] K.Ando,Y.Hirata,M.Shichiri,T.Emori,F.Marumo: "Presence of immunoreactive endothelin in humanplasma" FEBS.Lett.245(1,2). 164-166 (1989)
• [文献書誌] M.Shichiri,Y.Hirata,T.Emori,K.Ohta,T.Nakajima,K.Sato,A,Sato,F.Marumo: "Secretion of endothelin and related peptides from renal epithelin cell lines" FEBS.Lett. 253(1,2). 203-206 (1989)