研究概要 |
初年度に引続きコレステロ-ルエステル転送蛋白(CETP)欠損症例のリポ蛋白異常を解明することによって以下の事実が明らかとなった。CETPはHDL中のコレステロ-ルエステル(CE)をVLDLやLDLへ輸送することによってHDLをコレステロ-ル(Ch)poorな粒子にし、さらにHDLを介した細胞よりのCh汲み出しを促進している可能性が示された。CETPはHDLのみでなくアポB含有リポ蛋白(VLDL,IDL,LDL)の代謝にも大きな影響を与えLDLの形成に重要な役割を果していることを明らかにした。即ちCETP欠損症のLDL粒子は正常のそれと異なり,サイズの違う二つの粒子集団から構成されていることが明らかとなり,また大きい方の粒子集団は正常者のLDL粒子集団と一致した。すなわち,正常者では,LDLの前駆体であるVLDLは二種類の粒子集団として肝臓から分泌されるが,CETPの存在によりHDLからCEを小さい方の粒子集団に転送することによって均一なCEーrichなLDLに成熟するものと考えられた。CETP欠損症で残存するLDLの小粒子集団はLDLレセプタ-に結合能が弱いことが示されCETPはHDLを介した末梢組織からのCh汲み出しのみでなく,その終点である肝への運び込みにも重要な役割をなしていることが明らかとなった。CETP欠損の遺伝子変異の検討もなされ,14intronの5'splicing donorsiteの異常がcommon な変異であることを見出したが,そのヘテロ接合体でもCETPが完全に欠損しホモ接合体のphenotypeを示す症例を二例見出したことからいわゆるcompound hetereとして他の変異もCETP発理に関連する可能性も示した。
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