ヒトTPO遺伝子産物の大量分離法を確立するためヒトTPO・cDNAとジヒドロ葉酸還元酵素・cDNAを同一発現ベクタ-に組み込み、CHO細胞で発現させた。 培養液中のメソトレキセ-ト(MTX)濃度を上げることによりヒトTPO遺伝子は増幅され、細胞あたりのTPO活性も増した。こうして確立した500μM MTX耐性株のミクロゾ-ム分画を以後の組み換えヒトTPO(rhTPO)の免疫学的性状の検討に用いた。 ヒト甲状腺組織から精製したTPO(native TPO)を固相化したmicroーELISAの系で、rhTPOあるいはnative TPOをinhibitorに用いて自己抗体のnative TPOへの結合を阻止する能力を比較すると、rhTPOはnative TPOとほぼ同一の結合阻止能力を示した。また、両者をそれぞれ固相に用いた血清のdilution testでも、自己抗体の結合patternはほぼ同一であった。backgroundという点ではrhTPOの方がnative TPOより低くELISAの固相に適したいた。このrhTPOを用いたmicroーELISAの系に抗TPO自己抗体国際標準血清を導入しててIU/mlの単位で血清中の抗TPO自己抗体濃度を表示できる様にした。小児科領域の甲状腺関連疾患患者血清百数十検体を用いてマイクロゾ-ンテストにおける抗体価と抗TPO抗体価の間の相関を検討したところ、全体では両者間には相関はなかったが、サイロイドテストが100倍以下の検体については有意な相関がみられた。我々の抗TPO迅己抗体だけを特異的に定量するキットを開発するという目的に合致した結果であった。 TPOの酵素活性部位の決定に関しては当初から第8、9、10エクソンに含まれる各1個のHis残基のうちどれがproximalおよびdistal Hisとして活性旧であるHeme鉄に結合するかという間題として捉えていた。この観点からvaccinia virusの発現系でTPO・cDNAを発現させたところ、第10エクソンが欠如する短いcDNAの発現ではWestern blotにより蛋白は確認できるがTPO活性は検出できなかった。立体構造の変化が影響しているという可能性は残るものの、第8と10エクソンに含まれるHis残基がそれぞれproximalおよびdistal Hisとして働いていると推定している。
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