研究概要 |
昨年度に引き続き、多分化能を有する正常ヒト骨髄造血幹細胞の精製とcarrier cellとしての検討、ならびにより効率的な発現ベクタ-の作製を目的として研究を行った。 50x10^8個の正常ヒト骨髄有核細胞より貧食細胞、付着細胞を除去後、各種血液分化抗原の発現を指標に、モノクロ-ナル抗体処理により最終的にCD34(+),Ia(+)細胞1.2x10^7個を得た。BFUーE,CFUーGMコロニ-数から、出発材料から約25から30holdの造血幹細胞の濃縮が可能であった。 次に、メチルセルロ-ス培地中にcolchicine 2ng/ml,ADR 4ng/ml,VP16 33ng/mlを添加したところ95%のコロニ-形成抑制が培養14日目にて得られた。この条件にて濃縮した骨髄細胞2x10^6個をウイルスを含む培養上清の存在下に半固型培地にて培養したところ、BFUーE,CFUーGMコロニ-数は90%以上の抑制を認めたが、21日目にて残存するコロニ-集落中の生細胞数はウイルス(+)培養において増加していた。 さらに、より効率的な新レトロウイルス開発を目指し、二種のパッケ-ジング細胞を用いたピンポン増幅を試みた。すなわち、既に樹立されたプロデュ-サ-細胞(PA317)にGP+E86細胞を混ぜて高ウイルス力価株を作ることを試みた。その結果、208F力価は50倍程度増幅できたが、ベクタ-の中に大きなdeletionが起きて、挿入した遺伝子の発現のまったくない粒子が発生していることを確認した。このような増幅は、急速なものであるためにいろいろな組み替えが、起きているものと推測している。
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