研究概要 |
ヒト多剤耐性遺伝子(MDR1)は薬剤のトランスポ-タ-としてはたらく膜タンパク質Pーglycoprotein(分子量約170kDa)をコ-ドしており、Vica alkaloids,anthracycline,colchicine,actinomycin Dをはじめとする各種薬剤の細胞外への排出に重要な役割をはたしている。 近年、MDR1cDNAおよび28個のエクソンからなるMDR1遺伝子が単離され、がん化学療法を行う上での問題点であった多剤性の機構が分子レベルで解明される可能性が開かれてきた。 こうした現状をうけて、我々はMDR1のcDNAを多分化能を有する正常ヒト骨髄造血幹細胞へ効率よく導入し、正常造血細胞の薬剤感受性を低下させることを最終的な目的として研究を行い、以下の結果を得た。 (1)MDR1cDNAを含むレトロウイルスベクタ-の作製と多剤性形質の発現。 全長約4.3kbのMDR1cDNAフラグメントをクロ-ニングし、これを発現ベクタ-pCO1に挿入し、ウイルスパッケ-ジングして培養細胞株MDCKに形質転換株を得た。 (2)多分化能を有する正常ヒト骨髄造血幹細胞の精製とcarrier cellとしての検討骨髄有核細胞から各種抗体処理を経てx20ー30の血液細胞の濃縮、精製を行った。 これらの細胞を用いてウイルス感染実験を行い、薬剤存在下でコロニ-あたりの生細胞数の増加は見られたが、コロニ-数の上昇は認められなかった。 (3)より効率的な発現ベクタ-の作製。 発現効率をさらに高めるために新たなベクタ-系の開発を行った。
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