研究概要 |
新生児期の緊急疾患として最も重要なものの一つであるが、未だに治療成績の悪い先天性横隔膜ヘルニアの治療成績向上を最終目的として行われた研究である。これは実質的に我々が1980年より行ってきたブタ鎖肛モデルを用いた研究の一部分をなすと言ってもよい研究である。鎖肛ブタ家系の内に発生している横隔膜ヘルニア家系を確立するのが第一の目的であり、鎖肛ブタ家系を維持出来た事自体が大きな成果と言える。(外科53(1):93,1991) しかし残念ながら、その後の家系内の横隔膜ヘルニアの発生が無くなった事、救命し成育した雌ブタも交配を繰り返しても異常仔を出生しなかったので、横隔膜ヘルニア家系の確立には至らなかった。 ブタI家系に発生した横隔膜ヘルニア詳細な解剖学的、病理学的検討結果は(日本小児外科学会誌26(6):1118,1990)に報告した。いずれも1〜4か月令に発生した遅発性ヘルニアであることが特異であるが、その意義についても検討を加えた。ここには遺伝学的解析も同時に報告したが、更に詳細な遺伝因子の統計学的な検討は本年太平洋小児外科学会に発表し、J.Pediatr.Surg.に報告する予定である。autosomal double recessive genesの存在が証明できた事が大きな成果である。 我々の経験したヒト臨床例における家族性横隔膜ヘルニアを検討報告し(第26回日本新生児学会,1990)、ヒトでの発生例を検討したが文献的に未だに親子発生例は全く見られていない。ブタでもこれだけ多数例の発生は我々のファ-ム以外の報告を見ないが、残念ながら親子例は作成出来なかった。 我々が横隔膜異常の胎児を手にしていない事より、正常の胸腹裂孔の閉鎖と腸管の腹腟内還納時期との関係は十分に示せたが、新しい成果を得るには至らなかった。
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