研究課題/領域番号 |
01480305
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
波利井 清紀 東京大学, 医学部(病), 教授 (50111539)
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研究分担者 |
多久嶋 亮彦 東京大学, 医学部(病), 医員
木股 敬裕 東京大学, 医学部(病 ), 医員
秋月 種高 東京大学, 医学部(病), 助手
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キーワード | 神経科学 / 脊髄 / 虚血 / 軸索再生 / 神経移植 / マイクロサ-ジャリ- / 中枢神経 / 末梢神経 |
研究概要 |
[研究目的]従来、脳や脊髄などの中枢神経系組織は虚血に対して非常に弱く、またひとたび虚血や外傷などにより障害を受けると局所のグリア瘢痕形成のためその部位における軸索再生は起こらないとされていた。しかし、近年では各種の動物実験により、中枢神経系組織も末梢神経と同様にある程度の虚血耐性および再生能力を有していることが明らかになりつつある。そこで我々は、脊髄の完全虚血に対する耐性および脊髄断端における軸索再生を明らかにするために独自に開発した近交系ラット移植モデルを用いて基礎的研究を行った。 [材料および方法]モデル作製には近交系ラットであるLewisラットを用いた。これは幼若ラット(ドナ-ラット)の上半身をマイクロサ-ジャリ-を用いて血管吻合を行い成熟ラットの鼠径部に移植するものである。本モデルでは1時間以上任意の時間の完全虚血が可能であり、さらに移植後の長時間の慢性実験も可能である。 脊髄の虚血耐性に関する実験では、生後2および4週齢のドナ-ラットを60から120分間の完全虚血に曝露したモデルを作製し、脊髄機能を肉眼的に評価し、4週間後に脊髄の病理組織学的変化を観察した。 脊髄の軸索再生に関する実験では、ドナ-ラットの脊髄の断端に同系成熟ラットの坐骨神経を遊離移植し、脊髄断端から移植末梢神経組織中への軸索再生の有無を光顕的および電顕的に観察した。 [結果および考察]脊髄の虚血耐性に関しては、60分から90分間の完全虚血においても脊髄機能はかなりの程度温存されていた。組織学的にも脊髄変性は軽度であった。同一虚血時間ではドナ-ラットがより幼若である方が虚血耐性が高かった。ドナ-ラット脊髄の断端に末梢神経を移植した実験では,その中への軸索再生が認められた。今後、移植末梢神経中にみられた再生軸索の起源などについて検索してゆく予定である。
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