研究概要 |
平成2年度の研究で,癌性腹水モデルにGーCSFとOKー432を腹腔内併用投与した場合,OKー432先行投与後GーCSFを投与すると,腹腔内遊出好中球のChemiluminescence(CL)活性が相乗的に増加し,生存日数が延長したが,OKー432後行投与では相乗効果はみられなかった。本年度はCL活性を全血法で追試し,かつOKー432先行投与で相乗効果が得られた理由と好中球の抗腫瘍作用をWinn中和試験で評価した。また腫瘍の存在部位とOKー432あるいはGーCSFの投与経路による影響を検索し,以下の結果を得た。(1)好中球のCL活性は分離好中球を用いた場合も,全血で検索した場合も略同様所見が観察された。(2)OKー432先行投与の意義は,好中球のCL活性がOKー432刺激後24時間目頃にpeakに達するが,GーCSF刺激の場合は6ー12時間目にpeakに達するため,この時間的な差で相乗効果が生じると推察された。(3)背部皮下移植腫瘍を用いOKー432を皮下投与後GーCSFを皮下投与した場合には生存期間の延長は見られず,採取した末梢血好中球のCL活性の増強も観察されなかった。(4)OKー432刺激好中球あるいはGーCSF刺激好中球を用い,MRMTー1と25/1の割合で混合し皮下移植した場合,OKー432では腫瘍増殖抑制傾向がみられたが,GーCSFでは対照群と差はなく抗腫瘍効果は無いものと推察された。(5)SD系ラットにMRMTー1を背部皮下移植した場合,担癌末期に末梢血好中球が有意に増加するが,この好中球をOKー432で刺激した場合,抗腫瘍効果は殆ど観察されず,逆にGーCSFで刺激した場合は腫瘍増殖促進様所見が推察された。以上の結果,腫瘍の存在部位とOKー432やGーCSFの投与経路が異なると,好中球の抗腫瘍作用が異なる可能性が推察された。また好中球を用いた中和試験で担癌早期の好中球はOKー432やGーCSF刺激によりCL活性や抗腫瘍作用の増強を示したが,末期では逆の作用を示す可能性が推察された。
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